日常英会話を上達させる最大のコツは何か。スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長の星友啓さんは「英語のラリーをつなげていくには、積極的に対話に参加していくアクティブ・リスニングのテクニックが必要だ」という――。

※本稿は、星友啓『脳を活かす英会話 スタンフォード博士が教える超速英語学習法』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

カフェに座っている二人の男性
写真=iStock.com/gmast3r
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アクティブ・リスニングが英会話の決め手

JTBが2018年に行った調査「コミュニケーションへの苦手意識」では、半数以上の日本人がコミュニケーション全般を「苦手」とした一方、7割以上の人は、聞くのは「得意」と答えました(*1)。こうした調査に表されているように、どちらかといえば、私たち日本人は聞くのが得意なのかもしれません。

しかし、相手の話を受け身の姿勢で黙って聞くだけの「パッシブ・リスニング」(passive listening)では、英会話のラリーは生まれません。

英語のラリーをつなげていくには、しっかり集中して相手の言うことを正確に聞き取るだけでなく、積極的に対話に参加していく「アクティブ・リスニング」(active listening)のテクニックが必要です。

アクティブ・リスニングの本質は、相手の話を聞きながら、こちらから「繋ぎの言葉」を入れて、さらに相手の会話を引き出したり、自分の理解を深めていくことです。

*1:https://www.jtbcorp.jp/jp/newsroom/assets/2018_195.pdf

英会話のラリーをつくる4つの基本要素

「繋ぎの言葉」の基本要素は、以下の4つです。

1 Focus(フォーカス):相手の話に集中していることを示す。
2 Empathy(エンパシー):相手の気持ちを理解したことを伝える。
3 Paraphrase(パラフレーズ):相手の話を言い換えたり、まとめて確認する。
4 Question(クエスチョン):相手の発言を確認したり、より詳しく聞いてみる。

相手の話を聞きながら、これら4つの要素を織り込んで会話に参加していくのが、アクティブ・リスニングです。これによって会話のキャッチボールが生まれ、相手とのコミュニケーションがスムーズになったり、信頼が得られたりすることで、豊かに会話が弾んでいきます。

アクティブ・リスニングは、現代心理療法研究者のさきがけ的存在であるカール・ロジャースが提唱(*2)した方法で、心理療法やカウンセリングだけでなく、社会人教育の場でも幅広く応用されてきました。

このテクニックを身につけると、自信が増したり(*3)、メンタルが安定して友人関係がうまくいくなど(*4)、心の面でも良いことずくめであることがわかっています。

もちろん、英語などの外国語もより効果的に学べるという報告(*5)もあり、語学力のブラッシュアップにはぴったりです。

*2:Rogers CR, Farson RE(1957) Active listening. Chicago, IL: Industrial Relations Center of the University of Chicago.
*3:Graham S(2011) “Self-effi cacy and academic listening.” Journal of English for Academic Purposes. 10(2):113-117.
*4:Graham RA(2010) “Cognitive-Attentional Perspective on the Psychological Benefits of Listening.” Music and Medicine: An Interdisciplinary Journal. 2(3):167-173.
*5:Caruso M, Colombi AG., Tebbit, S(. 2017) “Teaching How to Listen: Blended Learning for the Development and Assessment of Listening Skills in a Second Language.” Journal of University Teaching & Learning Practice. 14(1):1-19.