正月は家族揃ってみんなで過ごすもの?
ちなみに、「妻の実家に帰省するのが嫌だ」という夫の中にもこういう傾向が多い。
本来、夫が妻の実家に帰省をしたところで、家事や育児を託されるケースは少ない。そのため、実家までの送り迎えなどをして、正月休み期間は一人でのんびり過ごしたり、男友だちなどと過ごす人もいる。筆者のまわりにもそういう「妻依存度の弱い夫」は何人かいて、正月からみんなで一緒に遊んだりする。
しかし、「妻依存度の高い夫」は普段から妻に頼りっきりなので、一人で過ごすことにも慣れていないし、「そっちの実家に行くのは嫌だ」という本音も言えない。結果、肩身の狭い「他人の家」で正月休みを送ることでストレスを抱えてしまうというワケだ。
しかし、一方で筆者の「そんなに正月に実家に行きたいのなら、嫌がる妻を巻き添いにせずに夫が一人で帰省をすればいい」という主張に対してハラワタが煮えくり返っているという方も少なくないかもしれない。
日本人にとって正月というのは「家族揃ってみんなで過ごす」という伝統行事である。つまり、「帰省ブルー」なんて自分勝手なことをのたまう嫁というのは、そんな日本が大切にしてきた「伝統的家族観」を破壊しているのではないかというのだ。
夫は夫の、妻は妻の実家に帰省するべき
ただ、それはちょっと「伝統」というものを誤解している。確かに、歴史を振り返れば、日本人は正月というものを家族で過ごしてきたが、そこにはもともと「嫁」は入っていなかった。
年配の人ならば、聞いたことがあるかもしれないが、かつて日本では正月や盆の帰省を「薮入り」と呼んでいた。これはもともと農村などから江戸に奉公に出されていた人たちが正月休みなどで暇を与えられて、家族の元に帰ることを指した。戦後間もない頃くらいまでは以下のように「中国人観光客の爆買い」のように特需的にも報じられた。
この日本の「伝統的な帰省」の中に入っていたのが「嫁」である。日本の伝統的家族の中で嫁は、夫の両親と同居をして、使用人のようにこき使われていた。だから、他の奉公人と同じく、正月や盆になると自分の実家に戻ることが許されたのだ。
つまり、そんなに伝統を守るべきというのならば、この古来の「藪入り」という慣習に従って、妻は自分の実家へと帰省してもらうべきだ。夫の帰省に同伴をさせて、義家族に気を使いながら正月休みを過ごすなんてことは、伝統を破壊する愚かな行為なのだ。