親子、夫婦関係に強い憎悪が潜んでいる

わかりやすいのは「殺人」である。

ご存じの方も多いだろうが、実は日本人の殺人で最も多いのは「親族間」である。令和6年の警察白書の「殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況」で最も多いのは「親族」で40.4%である。ニュースやワイドショーで大きく報じられる「交際相手」(12.4%)や「面識なし」(13.5%)に比べると圧倒的に多い。

さらに、この「親族殺人」の詳しい内訳を見れば、もっと驚く。被疑者から見て最も多いのは「親」(33.7%)で次いで「配偶者」(32.2%)となっている。それはつまり裏を返せば、実はこの日本社会の中で、「殺人に発展するほどの強い憎悪」が潜んでいるのは、「親子」「夫妻」という人間関係の中が最も多いということだ。

「帰省ブルー」は自分を守る本能の結果

そんな一触即発の憎悪を内面に溜め込んでいる人々が、1年に1回「全員集合」をするのが、正月やお盆の帰省である。もちろん、仲良く一家団らんで過ごす人たちがほとんどだが、中には「久々に会ったけどやっぱりウザいな」「ああ、帰ってくるんじゃなかった」なんてギスギスする家族も少なくない。血のつながった親子ですらこうなのだ。

その家族とはもともと「他人」である妻や夫が、義家族に対してストレスを感じたり、どうも性格が合わないと拒否反応を示したりするのは、人として極めて自然の感情だ。

ちょっと見方を変えれば、「ブルー」になるのはいいことかもしれない。自分自身の防衛本能が「この調子で深い関係になると本格的な殺意が芽生えてくるので、あまり近づかないほうがいいですよ」と警告をしてくれている、とも考えられるのだ。

だから、もし「帰省ブルー」に本当に苦しんでいるという方は、パートナーに本音を打ち明けて、「申し訳ないけれど、あなたの実家に行くのは気が進まないので今年は一人で行ってくれる?」と相談すべきだろう。

と言うと、「それができないから苦労している」という声が聞こえてきそうだ。