エルドアン大統領は急速にロシア寄りに…

さらにシリア内戦の対応をめぐっても関係が悪化しました。アメリカはシリア国内のIS(イスラム国)を掃討するため、シリア国内のクルド人民兵勢力に武器を渡して支援をしてきました。その結果、多くのクルド人民兵の犠牲を払ってISを弱体化させることに成功しました。

ところが、このクルド人勢力をトルコのエルドアン政権は目の敵にしています。トルコ国内で独立運動をしているクルド人勢力とつながっていると考えているからです。アメリカによるクルド人民兵支援にエルドアン政権は猛烈に反発しました。

池上彰『歴史で読み解く!世界情勢のきほん 中東編』(ポプラ新書)
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さらにエルドアン大統領はパレスチナ問題で、同じイスラム教徒であるパレスチナ側を支持。イスラエルを厳しく批判するようになっています。これが、イスラエルと親密な関係にあるアメリカには不愉快なのです。

アメリカという同盟国との関係が悪化すれば、アメリカを牽制するためにアメリカと敵対する国に接近する。これは国際関係ではよくあること。エルドアン政権は、急速にロシア寄りに傾斜しています。ロシアと対立してきたNATOに加盟していながら、ロシアから最新の地対空ミサイル(地上から発射し、航空機などを攻撃するミサイル)を購入することを決めたのです。

一方、トルコは黒海につながるボスポラス海峡を擁することから、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対して、仲介しようとする動きも見せています。中東の要衝に位置するからこそ、トルコの存在が脚光を浴びているのです。

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