迫害されたクルド人が国外へ逃げ出した
次第に独裁化を強めるエルドアンにトルコ国内で反発が強まり、2015年にはクルド人組織の「クルディスタン労働者党」(PKK)が独立を求め、トルコ軍と戦闘状態になります。
これ以降、エルドアンはPKKではないクルド人への迫害も強め、多くのクルド人が国外に逃げ出すようになります。ドイツなどヨーロッパに逃げたクルド人が多かったのですが、日本に逃げ込んできた人たちもいるのです。
エルドアン大統領によるイスラム化は続きます。2020年、エルドアン大統領は、博物館として公開されていたイスタンブールのアヤソフィアを宗教施設であるモスクとして使用すると宣言したのです。
アヤソフィアは、東ローマ帝国時代に創建されたキリスト教の本山のひとつでしたが、1453年、オスマン帝国に征服されてからモスクに転用されました。
もともとキリスト教の教会だったものが、その後、モスクになったことで、同じ施設の中にキリスト教の宗教画とイスラム教の『コーラン(クルアーン)』の文字が並ぶというユニークな施設で世界遺産になっています。
オスマン帝国崩壊後に政教分離を進めたケマル・アタチュルクは、1935年にモスクとして使用することをやめて博物館にしました。その結果、誰でも観光できる施設になっていました。このような歴史的経緯のあるところを、再びモスクとして使用する決断は世界を驚かせました。モスクとしてイスラム教徒の祈りの場にされましたが、祈りの時間以外は、これまで通りに観光客に公開されています。
トルコとアメリカの「微妙な関係」
トルコの位置はヨーロッパとアジアの間という絶妙な場所にあります。領土は、ボスポラス海峡にまたがり、西はヨーロッパ、東はアジアに属しています。
国民の大多数はイスラム教徒ながら、親米国家としてアメリカが主導するNATO(北大西洋条約機構)に加盟。アメリカ軍基地を受け入れてきました。東西冷戦時代、ソ連の存在が脅威だったからです。
ところが、トルコとアメリカは、微妙な関係にあります。きっかけは2016年に起きたクーデター事件でした。エルドアン大統領は、「クーデターの黒幕」と主張するアメリカ在住のイスラム組織指導者のフェトフッラー・ギュレン師の引き渡しを要求しました。これに対してアメリカは、十分な証拠がないとして拒否。関係の悪化が始まっていました。