健康保険証廃止をめぐる公的記録がない
このように、国民の命と健康に大きく関わる健康保険証の運用が、大企業の営利追求という目的によって大きく歪められている疑惑がある中、東京新聞は2024年9月25日、河野デジタル大臣とデジタル庁、厚労省への取材に基づき、健康保険証の廃止という重大な政策決定がどのような議論を経て行われたのかという公的記録が政府内に「残されていない」との驚くべき事実を報じました。
「いつ、どんな議論を経て、誰が決めたのか。現行の健康保険証の廃止がどのようにして決まったのか、その経緯が分かる記録を政府は残していなかった。決定に至るまでの手続きも異例で唐突だった。国民が納得するだけの説明もない」
公文書管理法が課している記録義務
2009年6月24日成立、2011年4月1日施行の「公文書等の管理等に関する法律(公文書管理法)」の第一条には、「この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、(略)国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする」とあります。
また、同法の第四条は「行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない」との文言で公文書の作成を義務づけています(「次に掲げる事項」の一は「法令の制定又は改廃及びその経緯」であり、健康保険証の廃止という決定はこれに該当します)。