新浪発言の裏に見え隠れする「利権」

国民の命や健康を支える健康保険証の代替システムが、現状でトラブル山積にもかかわらず、居丈高に「納期」というビジネス用語を使って、政府に廃止を「指図」するかのような新浪代表幹事の態度は異様です。

彼が社長を務めるサントリー(ホールディングス)は、毎年500万円前後を自民党に政治献金しているほか、新浪社長自身も2014年8月から現在まで、政府の経済財政諮問会議で民間議員を務めています。

また、サントリーは安倍首相主催の「桜を見る会」に、2017年から2019年の3年間で計400本近い酒類を無償で提供していました(2022年5月28日付東京新聞)。政治資金規正法は、企業の政治家個人への寄付を禁じていることから「違法な企業献金に当たる可能性がある」との指摘もなされました。

長年、政府と歩調を合わせてきた経済界

サントリーの公式サイトを見ると、「事業紹介」のページに「食品事業」「スピリッツ事業」「ビール事業」「ワイン事業」と並んで「ウエルネス事業」という項目があり、健康食品やサプリメントの製品紹介と共に、次のような説明があります。

「サントリーは長年にわたる食の科学的研究や品質管理技術を礎として健康・ライフサイエンス分野の事業に参入しました。(略)2001年からは、従来からの健康関連の研究開発を一層強化することを目的に『サントリー健康科学研究所(現、サントリー生命科学研究所)』を設立。(略)また、商品だけではなく、会員向けサービス『サントリーウエルネスクラブ』や無料の健康行動アプリ『Comado』などのご提供を通して、人生100年時代のお客さまのトータルウエルネスの実現をサポートしています」

前記した「新浪発言」の問題点を報じた2023年8月15日付の東京新聞は、名古屋大大学院の稲葉一将教授(行政法)の以下のようなコメントを紹介しました。

「2000年代から、経済界が求める要望と政府のデジタル化政策とは、歩調を合わせてきた。(略)個人情報を資源とみなしたこの段階(2013年6月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」)で、医療や福祉、教育といった分野での情報収集や活用がすでに想定されている。マイナンバーの情報を連携すればその履歴から人物像を人工知能(AI)が解析し、製薬や教材づくりといったビジネス利用も可能となる」