※本稿は、Los Angeles Times編、児島修訳『OHTANI’S JOURNEY 大谷翔平 世界一への全軌跡』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
「夢は大切だ。でも…」大谷に伝えたこと
(ディラン・ヘルナンデス 2017年9月29日)
佐々木監督は、自身が野球部の監督を務める花巻東高校の一室の窓から外を眺めた。岩手の郊外なら、2億ドルでどのくらいの広さの土地が買えるかと尋ねると、彼は同校の土のグラウンドの向こうにある森に覆われた山々と田んぼを指差して言った。
「おそらく、あなたが目にしているものすべてよりも広いでしょう」
彼は下を向き、教え子との最近の会話を思い出して笑った。「彼に言ったんです。『君は私が一生かけて稼ぐ額の200倍も稼げるよ』って」
佐々木監督は、お金とチャンスについて、大谷と腹を割って話し合わなければならないと感じたという。「夢は大切だ」と佐々木監督は大谷に言った。「でも君は、現実の世界に生きているんだ」
「彼らしい。昔からちっとも変わってない」
彼は、大谷の将来のお金のことを考えて、あと2年日本に留まるべきだと告げた(2年待てば、契約金に上限がある「25歳ルール」の適用外になる)。メジャーリーグで負傷した数々の日本人選手のことや、シーズンの大半を欠場したり、手術が必要になったりする可能性のある足首の怪我、アメリカのマウンドがいかに硬く、それが足にどう影響するかなどについても話した。そして、メジャーで成功しない可能性についても。
「お金がすべてじゃない。でも2年後には、もらえる報酬の額は桁違いになる。待ってみてはどうか」と監督は教え子に言った。
大谷は熱心に、真剣に話を聞いていた。そして、自分が話す番になると、「それでも行きたいです」と言った。
佐々木監督は、このときの会話を思い出して微笑み、首を振った。
「彼らしい。昔からちっとも変わってない」