会社の“価値評価”が半分以下に
マスクの大人げない態度はどれも、Xのビジネスにとっての厄災を意味した。マスクは2023年7月に、広告収入が50%減少したことを明らかにしている。
同年9月までに、米国市場の広告収入は60%減少した。Xのキャッシュフローは依然マイナスであり、買収取引のために調達した借入金からは多額の利払いが発生している。それだけにとどまらず、本命のサブスクリプションビジネスを構築することでXの収益源を多様化するというマスクの目論見は実現しなかった。
青いチェックマークのために毎月8ドルを払おうという殊勝なユーザーはほとんどいないことが明らかになったのだ。
ツイッターからXへのリブランディングを断行した頃までに、会社の価値評価はわずか200億ドルとなっていた。前年の秋にマスクが支払った440億ドルの半分にも満たない。
だが、マスクには少なくともユーモアのセンスが残されている。「私のことをなんと呼ぼうと皆さんの勝手ですが、私は、世界最大の非営利団体を440億ドルで買収したのです(笑)」とフォロワーにジョークを飛ばした。
報道の問い合わせに「ウンコの絵文字」で返した
Xの問題の大半は、マスク自身に起因するものなのだが、マスクはまるで自分の言動が何の影響ももたらさないかのように会社の運営を続けた。4月にはとうとう、本社ビルのツイッターの看板の「w」を塗りつぶし、「Twitter」を「Titter」に変えた。翌日には、自身のツイッターのユーザー名を「ハリー・ボルツ」に変更している。
マスクが広報チームの従業員をすべて解雇したため、報道関係者が同社の広報担当者のメールアドレスに問い合わせメールを送ると、ウンコの絵文字が自動返信されるようになった。マスクのキャリアを追ってきた人にとっては、いつもの悪ふざけである。
Xが、ブランドイメージを大事にする広告主に収益のほとんどを依存しているという事実さえなければ、無害なジョークで済んだかもしれない。
ずっと大きな波紋を呼んだ決断もあった。マスクは、ツイッター・ブルーのサブスクリプションサービスに登録していないすべてのユーザーのアカウントから青いチェックマークを削除した。
これにより、何千人ものジャーナリスト、セレブ、そして報道機関が「認証されていない」アカウントとなった。その結果、世界的なニュースソースとしてのツイッターの評判は、瞬く間に失墜した。
この施策により、長い間マスクが不満を抱いていた「二重階級」制度は確かに解消された。8ドルを払えば誰でもブルーチェックの認証を受けられるようになったのだ。