“言論の自由”のために保守派アカウントを復活させた

もっとも注目すべきは、Xをより言論の自由が守られた空間にするという約束の実現へ向けて乗り出したことだ。ツイッターが提供してきた新型コロナウイルス関連誤情報ポリシーを撤廃し、複数の保守派ユーザーのアカウント停止処分を取り消した。

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写真=iStock.com/Adam Yee
※写真はイメージです

1月6日の「選挙を盗むのを止めろ(Stop the Steal)」運動の組織化で中心的役割を果たしたとされるトランプ支持者のアリ・アレクサンダー(編集部注:極右の活動家)も復帰した。白人至上主義として知られるニック・フエンテスも同様だ(ただし両者のアカウントは、すぐに再凍結された)。

看板キャスターのタッカー・カールソンが、驚いたことにFOXニュースと「別々の道を行く」ことで合意したと発表すると、マスクはテレビの代わりにXで人気トークショーを再現できるようカールソンを支援した。

ドナルド・トランプ大統領も、短期間ではあるが戻ってきた。トランプは2023年8月、米大統領選でジョージア州の選挙結果を覆そうとした容疑で、同州フルトン郡の拘置所に収監された後、自身のマグショット(訳注:出頭後に撮影される顔写真)を投稿している。トランプはこのツイートで選挙資金を集めようとしたのだ。

マスクは自身の全フォロワーにトランプの投稿をリツイートし、「次のステップ」とコメントした。

大手ブランドの広告がなくなっても「まったく気にしない」

マスクが「ツイッター」と別れを告げたかった理由はおおむね理解できる。Xは、マスクが怒りと苛立ちを覚えてきたツイッターにまつわるすべてのことからの決別であり、再出発の象徴であった。

また、就任してからの9カ月間が、紛れもなくビジネス上の大失敗だったという現実から皆の目を逸らすチャンスでもあった。買収後の最初の数週間に、マスクの行動に怯え、脱兎のごとく逃げていった広告主の大半は、いまだに戻ってきていないか、戻ってきたとしても広告費は以前に比べてずっと少ない。マスクは自分で自分の首を絞め続けた。

2023年11月、あるユーザーが「ユダヤ人コミュニティは、自分たちに向けるのはやめてくれと主張してきた憎悪とまさに同じ種類の弁証法的な憎悪を白人に突きつけてきた」と書いたのに対して、これを支持するツイートを投稿した。「あなたは事実に基づいた真実を語っている」と返信し、ユーザーや広告主から幅広く反発を招いたのだ。

アップル、IBM、ディズニー、その他いくつかの大手ブランドがこれに抗議して、Xへの広告掲載を一時中止した。その直後、マスクはニューヨーク・タイムズが主催するカンファレンス「ディールブック・サミット(DealBook Summit)」に登壇し、広告主がXのサービスをボイコットしてもまったく気にしないと述べた。

「もし誰かが広告を引き上げるといって私を脅そうとするなら、金で私を脅迫しようとするなら――とっとと出ていけ」と堂々と宣言した。