「ザッカーバーグは間抜け」とののしったイーロン・マスク

ザッカーバーグとマスクの間には、スレッズ誕生以前から、何年にもわたる確執があった。人工知能(AI)の将来的なリスクに関する、両者の意見の対立は周知の事実だ。

AIは本質的に危険なものであると捉えるマスクに対して、ザッカーバーグはマスクがAIの脅威を過大評価していると言う。その一方で、マスクはザッカーバーグのSNSプロダクトを侮蔑しており、インスタグラムは人々を憂鬱にさせ、人々の悲しみを深めると考えていた。

スレッズ以前は、競合として直接ぶつかることはなかったが、単なるビジネス上のライバルとして片づけられない関係であることもまもなく表面化した。マスクがザッカーバーグにケージファイトでの対決を挑み、総合格闘技(MMA)に熱中しているザッカーバーグはマスクの申し出を受け入れた。

その後、数日にわたりオンライン劇場でのパフォーマンスが続いた。だがそれも、マスクお得意の攻撃で終止符が打たれることになった。例のごとく、常識外れのツイートを投稿したのである。

スレッズのローンチ直後、「ザックはクーク(寝取られ男、間抜け)」とXに書きこみ、「文字通りの意味で、陰茎測定コンテストを提案したい」と続けたのだ。ザッカーバーグは数日後、対戦の中止を宣言した。「イーロンはふざけている、そのことに異論のある者はないと思う。かかずらっている場合ではない」と書いている。

Xは「衝撃と畏怖」の場へ変貌を遂げた

ツイッターを買収した当初、マスクはこのアプリを「最大限に信頼され、広く受け入れられる」ものにするという目標を掲げていた。ツイッター2.0が始動して1年、マスクはそのどちらも達成できていない。

今やXとなったツイッターは、ニュースのためのもっとも重要なソーシャルネットワークとしての地位を失った。その代わりに、マスクがハーメルンの笛吹き役を務める「衝撃と畏怖(訳注:圧倒的戦力を見せつけることで、敵の戦意をくじく戦略。米軍がイラク戦争で採用した軍事ドクトリンとして知られる)」のサービスとしての役割が拡大した。

マスクがどこまで本気なのか、自分の影響力の大きさを理解しているのか、ときに判断が難しく感じられることがある。今になっても、膨大な数のフォロワーを危険な形で利用することがある。

ツイッターの元従業員ヨエル・ロスを小児性愛者だと示唆し、自宅の売却に追いこんでからほぼ10カ月、あるテック・カンファレンスにロスがスピーカーとして姿を見せるや、マスクが再び口撃を開始した。

「ヨエル・ロスほど純粋な形の悪は、まず見たことがない」と、約1億6000万人のフォロワーに向けて書いたのである。だが今回は、自分に向けられた罵詈雑言の嵐をロスが目にすることはなかった。ロスはもうツイッターを利用していない。