後期高齢者4人を抱える現実…生活保護職員の心ない言葉
現在古道さんは、パートで働きながら、夫と義父との3人暮らしをしている。2人の子供は社会人になり、独立している。今年に入ってから、築24年の自分たちの家を売却に出したが、まだ買い手はついていない。
「義実家は、家は持ち家ですが土地は借地なので、年末に1年分の土地代26万円を私たちが支払います。徐々に光熱費も(義父の)食費も私たちが負担するようになっていき、嫁の立場の私からすると、たまったもんじゃありません」
負担が大きくなっていくことに不安を覚えた古道さんは、2019年、市役所に行き、国民年金だけで生活している義両親の生活保護について相談をした。
すると職員から、
「近くに親族がいるなら助けてあげてください。家も売って、売ったお金もなくなったら申請に来てください。生活保護の許可が出るのは条件ではなく、『助けなくてはならない』という人です」
と言われたと言う。
「義実家の土地は借り物ですから、義両親には何もない状態ですし、現状は世帯分離で同居しており、おそらく義父本人が申請に行けば申請は通るのでしょう。けれど、市役所に連れて行くのは夫。一緒に行けば、『あなたが支援できませんか?』と言われると思いますし、そもそも両親大好きな夫が親を連れて生活保護の申請に行くとも思えません。私は嫁の立場なので、私では申請できません。ただ、義父まで施設に入るとなったなら、『2人分の施設代を払うことはしないので、生活保護申請に行ってもらうから』と夫には言ってあります」
市役所職員の「条件ではなく、『助けなくてはならない』という人です」という意味がわからない。「助けなくてはならない」と思うのは誰か? 「助けなくてはならない」と思える人と思えない人がいるというのもおかしな話だし、理性ではなく感情、客観ではなく主観で生活保護が下りる下りないが決まるという仕組みは到底納得がいかない。
一方、特養に入所している88歳の義母は、嫁である古道さんの顔はもとより、自分の子どもたちや夫の顔さえ忘れてしまったようだが、体は健康そのもの。古道さん夫婦が同居している91歳の義父は、最近寝ていることが増えたものの、介護認定を受ける必要がないほど自分のことは自分でできている。
「夫にとっては、ここは実家ですが、私にしてみれば住みたくない家に住んでる状況がとても嫌ですし、お世話になったとは思っていない健康な義理の父の食事を作って、世話になった要介護1の実の父は独居という、どこか腑に落ちない現状に葛藤があります」