生涯都心に住み続けるためのコストは大きい

このことは拙著『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)や『年収200万円でもたのしく暮らせます』(PHPビジネス新書)に詳しいが、給料が上がらない、あるいは年金暮らしなのに物価は上昇する一方の日本で生き抜くためには、暮らしを見直す必要がある。

稼ぎを増やすのではなく、生活コストを下げるのだ。

トカイナカに住めば、その暮らしは、ほぼ自動的に手に入れることができる。

テレビ収録などは早朝からということもあれば、深夜にまで及ぶということも少なくない。

そこで2007年に都心のワンルームマンションを事務所として買い、家に戻れない日は事務所で寝泊まりすることにした。

13年にわたって二拠点生活を続けてきた私は、「都心は人の住むところではない」という結論に達した。

確かに都会は便利かもしれない。

おしゃれな飲食店やエンターテインメントがたくさんある。

しかし、都心が魅力的なのは、お金がある人にとってだけだ。

年金生活に入ったら、とてもではないが、そんなコストは、負担しきれないのだ。

退職後のお金について考える男女
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

トカイナカで暮らしても仕事はできる。

パソコンがあればオンラインでの会議や打ち合わせが可能なのだし、ラジオ出演や原稿の執筆はいくらでもできる。

私が都会にこだわっていたら、約12万点のコレクションを展示する「B宝館」を開設したいという構想も、実現していなかっただろう。

秋葉原の10分の1のコストで自身の「博物館」を開設

私が最初に買った家は予想通りバブル期には3倍の価格になったが、住むための家だったので、バブル期に売却することはできなかった。

ただ、その後、シンクタンクに転職した私の年収は、桁違いに増えた。

コレクションの部屋も作ったため、8LDKという巨大な家になったが、トカイナカなので、都心の狭小住宅の数分の一のコストで済んだ。

しかし、「おもちゃの部屋」もいっぱいになり、倉庫を2カ所に借りることになった。この頃になると何がどれくらいあるのか自分でも把握できなくなっていたが、もっとスペースが必要なことだけは確かだった。

かくなるうえは博物館を開設するしかないという思いが強まっていったのだ。

私のコレクション癖に理解を示していなかった妻は「集めるだけならまだしも、博物館はやりすぎだ」と猛反対だった。

しかし私は博物館構想に向かって貯金すべく、きた仕事は断らないという方針で走り続けた。

当初は秋葉原でと考えていたが、都内の土地が高騰して貯蓄が追いつかず断念した。所沢でもいいと妥協した。ただ結果的にはよかったと思っている。

所沢の中古ビルを丸ごと買い、「B宝館」を開設するのに1億8000万円もかかったのだが、秋葉原だったらその10倍近くかかるだろう。

しかも所沢に作ったおかげで膨大なスペースが確保できた。

B宝館の床面積は200坪、660平米もある。とても都会では確保できない面積なのだ。