「夫が残されるケース」は特に要注意
両親のどちらが残されても心配はありますが、特に注意が必要なのは、父親が残された場合です。残されたのが男性だと、食事の内容が偏りがちになります。アルコール依存症になるリスクも上がります。うつになるリスクも上がります。よく冗談交じりに「女性が残されたほうが長生きする」と言われますが、それは冗談ではなく、本当のことなのです。
あなたの父親はご飯を自分で炊いて、料理を自分でできるでしょうか。いまの高齢者は、「男性は外で働き、食事は女性が作る」という時代に生きた人が多い。そうすると、妻が亡くなったとたんにお米1つ炊けない。鍋の場所も、おたまの場所も分からない。そういう人が多いのです。
最初はコンビニやスーパーで総菜を買ってくればよいでしょう。けれどもいつまでもそういうわけにもいきません。できる限り自炊をして、健康的な生活をしてもらいたいものですが、それができないのです。結果として「糖質や脂質の多い食事」や「塩分の多い食事」に偏りがちです。もともと持っていた高血圧が悪化してしまうことも珍しくありません。
アルコール量や食事の変化を見逃さない
精神的なダメージにも注意が必要です。男親のほうが子どもに弱い面を見せないことが多いので、一見あまりショックを受けていないように振る舞っているかもしれません。けれども実際はかなりのショックを受けています。
アルコールの量も増えていきがちです(※)。以前はそれほど飲んでいなかったのに、いつのまにか毎日お酒を飲むようになっていないだろうか、どんな食事をしているのだろうか、など、特に男親が残った場合、半年間はこまめに連絡をして生活を見守る必要があります。
※Byrne GJ, et al. alcohol consumption and psychological distress in recently widowed older men. Aust N Z J Psychiatry. 1999;33(5):740-7.
とはいえ、忙しい日々の生活の中で、ついつい連絡する機会を失ってしまいがちです。時間があるときに電話をかけようと思っているだけでは、いつまでたっても時間はできません。そういう場合は、「いつ電話をかけるのか」を具体的に決めておくほうがよいでしょう。