目標は135キロ→87キロの減量

典型的な1日はこんなふうだ。朝4時半起床、バナナを平らげながらASVAB(編註 入隊審査試験)の勉強。5時に教科書を持ってエアロバイクにまたがり、2時間汗をかきながら勉強。俺はクソデブだっただろう? まだ体が重すぎて長距離を走れなかったから、バイクでできるだけカロリーを燃やす必要があったんだ。

それが終わると、近くの高校まで車を飛ばして、プールで2時間泳ぐ。それからジムでベンチプレスとインクラインプレス、下肢エクササイズのサーキットトレーニングをやる。

敵は自分の巨体だ。俺に必要なのは「くり返し」だった。それぞれのエクササイズを100回か200回ずつ、5、6セットやる。それからエアロバイクに戻ってもう2時間。

いつも腹を空かせていたね。まともな食事は夕飯だけ、それもたいした量じゃない。鶏もも肉のグリルかソテーに、野菜炒めと米をちょっと。夕飯後はまたエアロバイクを2時間漕いでから床につき、起きるとまたすべてをくり返す。

俺がとんでもなく不利な状況に置かれていることは知っていた。俺がやろうとしていたのは、落ちこぼれがハーバードをめざすとか、カジノで1回のルーレットに全財産をぎ込む、みたいなことだ。何の保証もないのに、自分に全賭けしていたんだから。

「俺には何の価値も力もない」と鬱に

毎日2回体重を量って、2週間で11キロ減らした。粘り強く続けるうちに、体重がスルスル落ち始めた。次の10日間で115キロまで減らした。体が軽くなったおかげで腕立て伏せと腹筋を開始し、本格的に走れるようになった。

朝起きてからのエアロバイクとプール、ジムのルーチンを続けながら、2マイル(3.2キロ)や3マイル(4.8キロ)、4マイル(6.4キロ)のランも組み込んだ。ランニングシューズを捨てて、シール候補生がBUD/S(編註 米海軍特殊部隊で行われる基礎水中爆破訓練)で履く、「ベイツライト」のブーツで走ったね。

これだけ努力していたんだから、夜はさぞ心安らかに眠れたと思うだろう? それが違うんだ。俺は不安で一杯だった。胃がキリキリ痛み、思考が堂々めぐりした。試験当日に頭が真っ白になる悪夢を見ることも、次の日のワークアウトが嫌でたまらないこともあった。

問題を抱えた人の頭のシルエット
写真=iStock.com/tadamichi
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燃料不足の状態で馬力を出しすぎたせいで、心身が疲労して、鬱みたいになった。結婚生活はボロボロで、離婚まっしぐらだった。パム(当時の妻)には、たとえ奇跡が起こって俺が入隊試験に合格してサンディエゴに行くことになっても、絶対ついていかない、と言われちまった。

パムはほとんどの時間をブラジルの実家で過ごし、俺は家で1人途方に暮れていた。「俺には何の価値も力もない」という自虐的な考えに溺れて、押し潰されそうになっていた。