11月に開かれる特別国会での首相指名選挙で、キャスティングボートを握る国民民主党は決選投票でも「玉木雄一郎と書く」との方針を確認した。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「『玉木』と書くことにより、与党に恩を売り、来夏の参院選は野党として戦うことができる。政治家として決断を下せないのは褒められたものではないが、非常に狡猾な戦略だ」という――。
決選投票でも「玉木と書く」
衆院選での「自公過半数割れ、立憲躍進」を受けて、次の政権の枠組みがいまだに見えてこないなか、あぜんとする情報が入ってきた。国民民主党が10月30日の役員会で、11月11日召集予定の特別国会における首相指名選挙で、石破茂首相(自民党総裁)と野田佳彦・立憲民主党代表の決選投票になった場合でも「玉木雄一郎代表の名前を書く」方針を確認した、というのだ。役員会では異論が出なかったというから、玉木氏が一人で暴走したわけではないらしい。
あきれてものも言えない。10月29日公開の記事(「石破首相」を選んでも地獄、「野田首相」を選んでも地獄…国民民主・玉木代表がこれからたどる"いばらの道")の中でも指摘したが、決選投票の候補者は、あくまで最初の投票で誰も過半数に達しなかった場合の、上位2人だけだ。「石破vs野田」の構図になった場合、「玉木」と書いた票は全て無効票になる。
国民民主に投票した有権者を無視する「職務放棄」
首相を選ぶことは、国会議員にとって極めて重要な仕事の一つだ。なぜなら、その1票は個々の議員だけのものではないからだ。首相指名選挙での1票とは「一人ひとりの国民に代わって、首相を選ぶ権限と責任を与えられた」1票なのである。そのような場で、無効票になるとわかっている投票をあえて行うのは、その議員に票を投じた国民の意思を無視する行為であり、国会議員としての職務放棄である。
28日のTBS番組で玉木氏が「決選投票でも玉木」と発言した時は、テレビ出演で舞い上がって思わず軽口を叩いてしまったのかもしれないと考え「発言を撤回したほうがいい」と指摘したのだが、まさか本当に党の方針にするとは思わなかった。
玉木氏の言動の軽さは今に始まったことではないが、まさかここまでとは。