テスラが直面する試練とは

将来的に購入補助金政策などが修正された場合、テスラの中国シェアは低下し、BYDなど互角に競争することは難しくなるだろう。高価格帯のバッグなどを展開するモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)は中国の節約志向の高まりから販売が減少した。徐々に、テスラもそうした状況に追い込まれる恐れはある。

テスラにとって中国以外の国と地域で、自動運転技術、EV以外の収益分野を増やす必要性は高まっている。例えば、GMが重視しているように、米国で手ごろなEVの生産体制を確立して販売を増やす。日米韓などの企業と組んでバッテリー生産体制も整える。充電ステーションの増設を進め、自社の充電技術を国際規格に押し上げることなどが考えられる。

“テスラ復活”とはまだ言いがたい状況

ドイツでは自動車産業界が苦境に直面した。政治面の先行き不透明感も上昇している。それは欧州委員会の政策立案を制約する要素になるだろう。テスラの充電規格(NACS)が主要先進国のスタンダードとして認定される可能性は高まっているとの見方もある。米国政府にとっても、中長期的なEV需要回復の可能性に対応するためテスラの充電技術は重要だ。

ただ、今のところマスク氏の目線は、宇宙や完全自動運転に向かっているようだ。11月5日の大統領選挙後、EVや半導体などの分野で米中対立が先鋭化した場合、テスラが中国に依存して業績の回復を目指すことは難しくなるかもしれない。追加のコストカットを実施しようとした場合に、テスラの労働者が経営陣と対立しカリフォルニア工場などでストライキが発生するリスクもある。

中国市場だけでなく、米国市場でもテスラの収益性は不安定化する恐れはある。7~9月期の決算データを見て、テスラの業績が反転し拡大傾向に向かうと論じるのは早計だろう。

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