中国政府は完全自動運転車の試験走行を認可

中国政府は、テスラの完全自動運転車の試験走行を認可した。同社は、中国のバッテリーメーカーであるCATLなどとの関係を強化しEV製造コストを引き下げる。その上で、フル・セルフ・ドライビング(FSD)システムを搭載した、新型EVを中国市場に投入する。

中国市場の需要を取り込み、業績拡大につなげるのがマスク氏の狙いとみられる。中国政府が新エネ車へ乗り換え補助を実施している間、テスラの中国事業が成長を支える可能性はある。

ただ、BYDなど中国メーカーは政府の支援で、テスラよりも実質的なコスト負担は低い。現在の中国経済において、EVは需要が伸びている重要な分野の一つだ。中国政府は、投資と生産の積み増しによる経済運営を重視している。国内EVメーカーの生産能力拡張を支援し、雇用・所得環境の下支えにつなげようとするだろう。

米企業のテスラが「中国依存」を強めるリスク

また、AIの利用などでデータの重要性は高まる。中国政府が、テスラに自国企業と同等の自動運転技術を認めるかは不透明だ。中国企業は半導体分野などで、台湾や米国企業の“真似”をしてきた。中国は自動運転技術を重視するテスラに、一時的な事業認可を与える。

その期間を利用し、バイドゥなど中国企業がテスラのソフトウェア、システム開発技術などを模倣し、習熟を深める機会にする。それが中国の狙いともいえそうだ。半導体などの分野で中国と対立する米国企業であるテスラが、今後も、中国市場に依存して成長を実現できるか疑問符が付く。

2024年9月末までの3年間でテスラの粗利率は26.6%から19.8%に低下した。テスラとEV世界トップを競うBYDの粗利率は2021年7~9月期の13.3%から4~6月期の18%台に上昇した。中国の地方政府の財政悪化、不動産市況悪化によるデフレ圧力、家計、企業の支出抑制姿勢の強まりと経済全体でのバランスシート調整の進行など、中国経済の先行き懸念材料は多い。

テスラ・サイバートラック
写真=iStock.com/Sven Piper
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