EV離れの中、中国でシェアを伸ばすテスラ

EV購入の補助金がない場合、EVの価格の高さや充電インフラの不足、バッテリー発火などの懸念などマイナスの要素が多い。また、コストの低い中国EVメーカーとの価格競争激化は熾烈を極めることだろう。それと同時に、ここへきて需要者のEV離れが出ている。米国ではわが国のHVのシェアが上昇した。需要者は航続距離と環境性能の両立を再評価したといえる。

それとは対照的に、テスラは中国市場でシェアを小幅に伸ばした。7月の時点で中国市場の乗用車販売に占める、EV、PHVなど新エネルギー車の比率は50%を超えた。足許、中国の新車販売台数は減少しているが、EVなどの販売は増加傾向だ。

その背景にあるのは、政府のEV、PHV普及支援の補助金支給だ。7月、中国政府はEVなどに乗り換える場合、購入支援金を従来の1万元から2万元(40万円程度)に増やした。BYDや小鵬汽車、浙江吉利(ジーリー)など中国企業の製造コストは、政府からの産業補助金支給などで低い。安いEVが、もっと手ごろな値段で買えるため需要はEVに向かった。

マスクCEOは強気な姿勢をアピール

7月以降、テスラのEVを公用車として認定する中国の地方政府も出始めた。テスラはそうした政策のベネフィットを取り込み、上海の工場でコストを抑えてEVを生産し、販売増加につなげた。4月以降、テスラはリストラを行い、世界の従業員の10%程度を削減したといわれている。コストカット策も、収益の改善に寄与した一因だろう。

テスラは、年間販売台数3000万台の中国、1560万台の米国、世界の2大自動車市場で生産を行いEV需要を取り込んだ。世界的なEVシフトの鈍化、米国の中国製EVへの関税賦課(9月27日から100%)など、安価なEV輸入に対する関税引き上げでテスラの中国市場への依存度は上昇傾向にある。

決算発表の場でイーロン・マスクCEOは、「自動運転が導入され、低価格EVが登場すれば、2025年の自動車販売台数は伸びる」と先行きに強気だった。その背景にも中国の政策への期待があるだろう。