大規模な地震が起きるとライフラインが寸断され、食事や入浴、トイレ、洗濯といった普段通りの生活ができなくなる。どうやって心身の健康と清潔を保てばいいのか。国内外30カ所以上の被災地で活動してきた国際災害レスキューナースの辻直美さんに、避難生活をストレスフリーで過ごす方法を聞いた――。(第2回/全3回)
何よりも優先すべきは「水」
「ライフラインが切れると、どんな被災に見舞われるのか、想像してみてください。例えば、震度6強の首都直下地震が起きた時、真っ先に電気、水、ガスが止まる。どうしますか?」
被災時に自分が置かれる状況を想像する手立てとして辻さんが勧めるのが、防災科研のサイト「地震10秒診断」だ。震度6強の地震が30年以内に発生する確率が10%とされる都内のある地域では「断水32日、停電4日、ガス停止21日」と診断された。
「最初の2日を生き延びれば元通りに復旧すると思っているでしょうが、長期にわたるはずです。震度6強だと都内全域で断水する。給水車は、道が寸断されていて通れない。さらに指令系統が混乱しているため、給水車の発動が遅れる。水がなかなか手に入らないと想定して、何よりも優先して用意すべきなのは、水です」
1人あたり最低40リットルの保管を推奨
熊本や大阪府北部地震の際、レスキューの要請を受けた辻さんが目の当たりにしたのが、水の備蓄不足だった。ある被災地では路上で500ミリリットルの飲料水が3000円で販売されていた。そして、半日経った帰りには1万円に値上がりしていたという。法外な値でも、水の備蓄が足りない人は買わざるを得ない。
生命維持のため成人1人当たり1日に最低3リットルは必要になる。飲用・食用が2リットル、残り1リットルは生活用水(食器洗い、掃除、手・からだ洗いなど)だ。
国は最低3日~1週間の家庭での備蓄を推奨しているが、断水の日数が例えば30日とすると、必要量は90リットル。夫婦2人であれば、180リットルと相当な量になる。2リットルのペットボトル45本分。辻さんは、10~14日分の1人あたり最低40リットルは保管したほうがいいと勧める。