もちろん、判断が正しいかどうかは、やってみなければわかりません。でも、100回判断すれば、100回とも正しい方向を選ぶのがリーダーの役目だと思います。一度方向性を定めたら、結果が出るように必死で頑張る。そうすれば、結果としてそれが正しい判断を下したということになるのです。
リーダーは勝ち続けなければなりません。競争相手はもちろん、ビジネスの困難さ、技術の高い壁、自分の弱さにも打ち勝つのです。そうやって勝ち続ける姿を見て、人は必ず信頼しついてきてくれるはずです。それには、体のタフさが不可欠です。体が健康で、アクティブな状態でないと、積極的な気持ちにはなれない。私は大学時代にアメリカンフットボールをやって、チームプレーを学ぶとともに、自らを鍛えました。いま思えば、私の実行力は、大学時代に培ったこの経験に負うところが大きいと思います。
リーダーには強靭な精神力も不可欠です。大学時代に没頭して読んだ哲学、ニーチェの思想に大変影響を受けました。彼が書いた『ツァラトゥストラかく語りき』の中には、「人間は自由で、誇り高く、賢く、強く、正しく、美しく生きるべきである(超人)」とあります。また彼は、「蛇のように賢く、鷲のように誇り高く、獅子のように強く自由で」ともいっています。
私もそれ以前からそう思っていましたし、そういう生き方をしようと改めて確認したのです。これらは、現代のリーダーに必要な資質そのものです。
「美徳」も忘れてはいけません。矜持、誇り、倫理、愛、温かさ……。
いろんな個性が主張しあうのが世の中です。軋轢を恐れては駄目です。リーダーは、正しい目的の達成のために最後まで戦い続けなければならない宿命を背負っているのです。
※すべて雑誌掲載当時
富士フイルムHD会長兼CEO 古森重隆
1939年、長崎県出身。県立長崎西高校卒。63年東京大学経済学部卒業後、同年富士写真フイルム(現・富士フイルムホールディングス)入社。富士フイルムヨーロッパ社長、常務取締役を経て、2000年社長、05年にCEOを兼務し、12年6月から現職。07年6月から08年12月までNHKの経営委員長も務めた。
1939年、長崎県出身。県立長崎西高校卒。63年東京大学経済学部卒業後、同年富士写真フイルム(現・富士フイルムホールディングス)入社。富士フイルムヨーロッパ社長、常務取締役を経て、2000年社長、05年にCEOを兼務し、12年6月から現職。07年6月から08年12月までNHKの経営委員長も務めた。
(山口雅之=構成 的野弘路=撮影)