体のタフさと強靭な精神力が必要
社内の構造改革と事業構造転換等を経て、業績は回復し、08年3月期には2兆8468億円の売り上げと2073億円の営業利益という史上最高の数字を記録しました。あとはこの軌道に乗っていけばいいだろうと考えていたところ、次なる試練に見舞われます。リーマン・ショックです。
売り上げは激減し、月次販売計画の達成率がわずか17%という事業部もありました。すべての事業部がそこまでひどくはなかったのですが、平均すれば全盛期の70~80%にしかすぎません。しかしながら、全社として少なくとも毎年2000億円程度の利益を出さなければ、将来に対する十分な投資はできません。
そこで、意を決して09年から再び構造改革に取り組みました。今回は、前回を上回る厳しさで臨み、徹底的に無駄をそぎ落とし、売り上げが2兆3000億円レベルでも10%の利益が出るよう体質改善を行いました。
構造改革は痛みを伴い、血も流れます。しかし、誰も傷つけないなどといってみんなにいい顔をしていたら、行き着く先は共倒れ、そして全体の死のみです。会社や社会が生き残るためには何をすべきかを徹底的に考えて、ブレずに最後までやり抜く。これがリーダーに課せられた使命です。
2度の構造改革で私が行ったことは、不要な部分や効率の悪いところを縮小し、将来性のある分野に集中して投資すること、子会社の連結経営でシナジー効果を高めることの2つです。たぶん誰がトップについても、同じようなことを考えたでしょう。私はこれらをやり遂げただけです。もしリーダーとして私に優れたところがあったとしたら、それは誰よりも思い切って実行したところでしょうか。
私たちは民主主義の世の中を生きています。では、民主主義とは何か。その一面は、各自いろいろと意見を主張するが、決めるのは多数決の原則に基づく、というものです。誰もが自分の利益ばかり主張していたら、いつまで経っても何も決まらない。だから、過半数が支持するものを、全体の意見とみなすのです。リーダーがこちらにいくと判断し、マジョリティが支持できるようなことを、自信を持って実行する、そうでなければならないのです。