決意までのプロセス

朝、夫を送り出し、長男を保育園に預け、探偵に会う。探偵は、紳士的な男性に見えた。不倫の告白から10日後、ようやく夫は不倫相手の名前を吐いた。Sという26歳の女性だった。人事担当である夫は、彼女を採用後、時々サポートをしているうちに彼女から告白され、2人で会うようになっていったという。

その後、夫の出張用カバンから、不倫相手の名前と一致する女性社員の履歴書が見つかったため、コピーをとっておいた。これまでの経緯を話し、証拠品見せると、探偵は作戦を提示した。

・夫の車にGPSをつける
・不倫相手の誕生日に夫を尾行し、不倫の証拠写真を押さえる
・離婚は裁判や弁護士なしでも可能。示談ならば交渉次第で、慰謝料よりも高い示談金を請求できる可能性がある

「夫が自ら不倫を告白してきたので、不倫はほぼ確実です。ほぼ確実なのに、高いお金を払って探偵に調査依頼した上に裁判にかけたら、慰謝料は良くて300万。夫の場合は不倫期間が短いため、もっと低くなります。それなら、探偵さんの言う通り、1回20万円の調査で不倫相手の情報を掴んで、相手とコンタクトをとって示談に持ち込めば、素晴らしく効率的ではないかと思いました」

離婚は弁護士や裁判を通さないとできないと思っていた白柳さんは、示談という方法があることを知り、気持ちが明るくなった。不倫相手を特定し、相手から直接話を聞きたいと考えていた白柳さんは、契約書にサインした。

そして不倫相手の誕生日。探偵の提案通り、夫が相手のアパートに行っていたという証拠を掴み、白柳さんは不倫相手と会う約束を取り付ける。

探偵を交えて会ってみると、不倫相手はどこにでもいそうな普通の女性だった。白柳さんが質問し、それに相手が答えていくが、

・最初に告白したのは夫
・不倫が始まったのは昨年の12月(長女出産から5カ月後)
・会っているのはほぼ平日毎日

ということがわかり、不倫相手は「自分が悪いことをしていることはわかっているが、愛しているから別れたくない」と言い張った。

呆れながらも憤り、「自分の親は不倫していることを知っているのか? 知らないなら言ってその結果を報告して」と言って別れた。

後日、不倫相手から親に話した結果がLINEで届いたが、「親に人の道を外れたことをしていると言われてショックだったが、やっぱり別れたくない」という内容に愕然。

一方、夫にもどうしたいのかを訊ねるが、「キミのこともSのことも両方愛したい」と繰り返し、Sを庇い続ける。

喧嘩している男女
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

その頃、夫が不倫を告白して4カ月が過ぎていた。夫とSの話から推測するに、不倫が始まってからは約9カ月が過ぎていた。

白柳さんは決断した。

「再構築したとしても、これまで私の知らないところで素知らぬ顔して不倫していたのは事実。私はそれを一生忘れないだろうし、ちょっとした事で『もしかして、また……』と不安になり、疑い続けるでしょう。今思えば、夫自ら不倫を自白してきたのは、罪悪感に苛まれてではなく、Sと一緒になりたくてではななかったか? 言葉ではどっちも愛したいと言いつつ、どう見てももう私の事は愛していません。今までどんな事をされても極力離婚に進もうとしなかったのは、子どもたちのことがあったからですが、もう限界でした……」