食用油と燃料油を同じタンクローリーで運ぶ

中国で、食の安全をめぐる懸念が再燃している。今年7月、食用油と燃料油を同じタンクローリーで搬送していたことが判明し、中国国内の消費者に衝撃を与えた。過去には下水から油分を汲み取ってレストランの料理に使用したり、腐った食材に下痢止めとして使われる薬を混ぜて提供することで期限切れ食材の使用の発覚を防いだりと、衛生環境をめぐる混乱が続いている。

中国のレストラン
写真=iStock.com/AleksandarNakic
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中国で食用油と燃料油を同じタンクローリーで輸送した事件は、食品安全に対する深刻な懸念を引き起こした。国営紙「北京日報」が詳細な調査報道を掲載したことで注目を集めたほか、英ガーディアン紙など欧米メディアも相次いで報じている。

北京日報の記者は潜入取材を行い、石炭燃料を積んだタンクローリーの運転手にインタビューを実施した。運転手は中国西部の寧夏ねいかから東海岸の河北省秦皇島しんこうとうまで、1290キロ以上を走ったという。

運転手は記者に「空の車両で戻ることは許されていない」と話した後、タンクローリーを洗浄することなく、河北省の別の施設へとタンクローリーを走らせた。32トン近い大豆油を積み込むためだ。

「公然の秘密」になっていた

このような運用はめずらしいことではなく、他のタンクローリーも同様の輸送を行っていたという。この運転手は北京日報に対し、食品と化学燃料を同じタンクローリーで清掃せずに輸送することはよくある「公然の秘密」であると話している。

中国の規定では、食用油と燃料油の輸送に、異なるタンクローリーを使用すると定められている。しかし、調査報告によると、これらの規定は無視されることも多く、検査も不十分であるという。燃料用であることを示す標識を白い紙で覆い、食用油を輸送していると報じられている。

ガーディアン紙はこの問題が、中国国民の「激怒」を引き起こしたと報じている。ブルームバーグは、事件を受け、中国糧食備蓄管理総公司が製造する「金鼎ジンディン」ブランドの食用油のネット販売が一部で停止されたと報じた。

ジョンズ・ホプキンス大学の政治学准教授ジョン・コシロ・ヤスダ氏は、ドイツ国際放送局のドイチェ・ヴェレに対し、「中国は食品システムの改革の初期段階にある」と述べている。中国の食品安全問題は一朝一夕で解決できるものではないとヤスダ氏は指摘する。