愛猫を「鍋や皿のように扱った」ペットショップ

トラブルが訴訟に発展するケースもある。埼玉県本庄市の会社経営者の男性(61)は2014年12月、愛知県に本社を置き全国展開するペットショップチェーンを相手に、購入した猫に先天性疾患があったとして、治療費や慰謝料の支払いを求める訴訟を起こした。

近所のホームセンター内の店舗で、男性が雄のロシアンブルーを購入したのは14年7月。埼玉県川口市にある動物病院の院長名で出された「健康診断書」も一緒に受け取った。診断書は「耳(耳道内)」「心臓(聴診)」など13項目中12項目について「異常なし」とし、「陰睾いんこう」は「未確認」となっていた。

ところが「ぽんず」と名付けたその猫を購入した当日、近所の動物病院に連れて行くと「胸の中央部分が陥没している。獣医師であれば気付かないはずがない」と診断され、検査をして漏斗胸ろうときようであることがわかった。漏斗胸は多くの場合が先天性。重症化すれば呼吸障害を起こす。

ペットショップの店長からは、「同じようなのでいいですよね。取り換えます」と言われた。男性は納得がいかず、チェーンの経営者に謝罪を求めると、役員から電話で「裁判してもらって構いません」と告げられた。男性はこう話す。

「家族として迎えた子を、この会社は、まるで鍋や皿のように考えている。経営者は謝罪もしない。そういう姿勢を直してほしいと思った」

獣医の関わり方が形式的なものになっている

大阪府堺市に住む公務員の男性(44)の場合、同市のペットショップで購入した雌のパピヨンに、先天性の心臓病である動脈管開存症(PDA)が見つかった。特徴的な心雑音が発生するので、聴診だけでほぼ診断がつくとされる病気だ。

ペットショップ経営者は犬の販売価格など約10万円を返金し、「(提携している)動物病院が健康だというので販売した」と話した。男性がペット店から渡された同市の動物病院発行の「健康診断証明書」には確かに、「先天性疾患の有無」という項目も含め、すべてが正常であるとしていた。

男性は12年5月、動物病院を相手に手術費分など約50万円の賠償を求めて提訴した。「家族になった以上、何があっても一生面倒を見るのが当然。先天性疾患だからといって、見捨てることはできない。獣医師には誠実な対応をしてほしかった」と振り返る。

一審は勝訴したものの二審で逆転敗訴となり、最高裁に上告したが棄却された。判決では「ショップから依頼された獣医師が、子犬の心臓を注意深く聴診すべき注意義務を負うとはいえない」と告げられた。

動物関係の法律に詳しい細川敦史弁護士は言う。

「生体販売の現場において獣医師の関わり方が形式的なものになっている。13年9月に施行された改正動物愛護法で、獣医師の果たすべき役割はより重くなった。消費者保護のためにも、獣医師にはより高度な職業倫理が求められていいと考える」

診察台の上で聴診器でゴールデンレトリーバーを検査する女性獣医
写真=iStock.com/gorodenkoff
※写真はイメージです