販売されているチワワの1~2%に発症リスクがある

犬では、プードルやチワワ、ダックスフントなど特定の犬種に人気が集中する状況が続いている。そのなかで、たとえばチワワでは最近になって、「神経セロイドリポフスチン症(NCL)」の発症事例が散見されるようになっているという。

ソファに横たわっている薄茶色のチワワ
写真=iStock.com/iiievgeniy
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NCLは運動障害や視覚障害などの脳機能障害を起こして死ぬ疾患で、有効な治療法はない。これまではボーダーコリーで発症する事例が多かったが、繁殖業者側の対策が進み、ほとんどみられなくなっていた。

「チワワではキャリア率が1~2%になっていて、注視している。チワワの販売頭数でこの確率だと、原因遺伝子を持つチワワはかなりの頭数にのぼる。ブームで数多く繁殖することで、遺伝性疾患が顕在化しやすくなる事例の一つといえるだろう」(大和教授)

別の犬種・猫種の組み合わせから生まれたいわゆる「雑種」であれば、それぞれに特有の原因遺伝子を受け継いで発症するリスクは減るとされるが、予期せぬ遺伝性疾患が出たり、組み合わせによってはかえって深刻な結果を招いたりすることもある。

遺伝リスクの高い「ハーフ種」も生み出されている

最近では様々な犬種・猫種をわざと掛け合わせ、一代限りの雑種を繁殖して「ハーフ」や「ミックス」と呼び、ペットショップなどが販売する事例も増えている。組み合わせによっては純血種よりも高値が付き、人気を集める。

だがたとえば、短足が人気のマンチカンと折れ耳が人気のスコティッシュフォールドの組み合わせについて、元日本大学教授の津曲つまがり茂久氏(獣医繁殖学)は「一番望ましくない交配だ」と断じる。マンチカンも軟骨無形成症という骨形成に問題が出る遺伝性疾患を持っており、骨軟骨異形成症を抱えるスコティッシュフォールドと組み合わせることで、より深刻な骨の病気を起こすリスクがあるという。

「繁殖業者や飼い主は、見た目のかわいさだけで犬猫を選択しないことが重要だ」(津曲氏)

津曲氏によると、英国や米国では、繁殖業者をたばねる血統登録団体が中心となり、親の遺伝子検査の結果をデータベース化するなどして対策を進めている。特に英国では犬について、疾患によっては、検査法が確立してから2~4年で12~86%、8~10年では約90%も原因遺伝子の保有率(変異率)が減っていて、「ブリーダーと飼い主の意識の高さがうかがえる」と話す。