本当は作家になりたかった
小林は1873年(明治6)、山梨県に生まれる。1892年(明治25)の暮れに慶應義塾を卒業し、1893年(明治26)年1月から三井銀行で働くことが決まっていたが、実際に小林が初出社するのは4月4日を待たなければいけない。
体調不良だったり、特別な事情があったりしたわけではない。なんとなく行く気がしなかったのだ。温泉でダラダラ過ごし、地方紙に時代小説の連載を書いていた。当然、銀行からは出社しろと催促を受けたが、「気が進まない」という理由で出社しなかった。時代といえば時代だが、それによってクビにならないのもすごいし、催促されても一向に出勤しない小林もすごい。
そもそも、小林は銀行で働く気はなかった。在学中から作家を目指し、卒業後は知人の伝手で新聞社に入ろうとしたが、立ち消えになり、しぶしぶ三井銀行で働くことにしたのだ(銀行に入ってからも新聞社に入社できないかと検討していた)。
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