――逆に、よい上司、尊敬できる上司とはどんなイメージでしょう。
【銀行】決断が早くて、指示が明確。必要だなと思ったらパッと上に電話してくれたり、一緒に行ってやるよと動いてくれたり、部下のモチベーションを上げる。過去にそういう上司はいましたね。
【証券】部下をちゃんと見る女性上司がいてくれたら。うちは出産すると派遣社員みたいな仕事しか回ってこなくなる。キャリアの先が見えないから、同期の女性もどんどん辞めていってしまった。
【商社】問題があったときに、一緒に行ってくれるか、くれないかは大きいよね。問題から逃げず、ずるくない人。
【証券】でも結局そういう「いい人」ってあんまり出世しなくない?
【メーカー】確かにうちは尊敬できる人ほど辞めちゃったりするね。部下じゃなくて、上だけ見てる人が残るし、出世する。
【商社】日本の会社って結局、共産主義なんだよ。会社としての利益より、上が言うこと、波風立てないことが重要。
オレ、最近家買ったの。そうしたら、保身上司たちの気持ちがすごくよくわかったよ。ローン組んで、妻は子供ができたら仕事辞めたがってるし、専業主婦にでもなられたら、絶対会社辞められないもん。「忠犬ハチ公」にでもなんでもなってやろうって、そのときは思った。でも2日で「やっぱり無理だ」って思ってやめたけどね(笑)。
日本でドラッカーの本が売れるわけがよくわかった。日本には「マネジメント」の専門職もいないし、知識を得る機会も少ない。「管理する」言葉や「部下のモチベーションを上げる」言葉を持つ人がいないのだ。管理職になっている人のほとんどはいわゆるプレーイングマネジャー。実務はできるが、マネジメント能力が高い人はあまりいないようだ。
外資系企業を取材したときに、「外資ではマネジメントはマネジメントとしてのプロ。部下の業績をあげることがその人の手柄」というコメントが出たが、日本ではまだ「マネジメント」と「プレーヤー」をわけるキャリアは難しいのか。変化の激しい今、「責任をとらない」「部下を育てない」「管理しない」「ビジョンを示さない」「問題解決能力がない」の「ないない」上司を嘆く人が非常に多い。
それでも「できるプレーヤー」なら、まだ会社に貢献している。問題なのは、既得権にしがみつき、変化を嫌がる「昭和上司」。彼らが現場を疲弊させ、若手を混乱させる元凶である気がする。