「体内時計」に合わせて暮らせるのは老後の特権

浅い眠りは「レム睡眠」といい、眠っている間もまぶたの下で眼球が動いていることが観察されています。体は休んでいても、脳は活動しているという眠りですね。深い眠りは「ノンレム睡眠」といい、眼球は動かず、脳も多くの活動を控えて休んでいる状態です。

若い頃は一般的に、入眠時にまずノンレム睡眠が現れ、1〜2時間後にレム睡眠へ移ります。以後は、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現れ、これを一晩で4〜5回繰り返して、やがて目が覚めるというパターンを描きます。

ところが年齢が上がるにつれて、ノンレム睡眠の出現が激減し、それだけでなく、浅いレム睡眠と少し深めのレム睡眠が20〜30分間隔で繰り返されるようになり、夜中、眠りが浅い状態がほとんどになってしまうのです。

つまり、夜中に目が覚めたり、早朝に起きてしまうのは加齢による自然現象というほかはありません。悩む必要もなければ、よほど問題がある場合をのぞいて睡眠導入剤の必要もないと考えていいと思います。

忙しい現役時代と違って「体内時計」に合わせて暮らすことができるのは、老後の特権ではないでしょうか。眠くなったら寝て、目が覚めたら起きる。時計の針を見るのを忘れて、自分なりに十分眠ったと感じられる睡眠スタイルをとればいいのです。

年を取ったら、少しの時間に「上手に休む術」を身につけよう

朝は早く起きる(起きてしまう)のだけれど、夜は晩酌を楽しんだり、テレビを見たりでつい遅くなり、睡眠不足気味だという人もいるでしょう。

疲れや睡眠不足は、とにかく溜め込まないこと。健康維持のためにはそれを心がけることが何より大切です。特に年齢を重ねてくると、睡眠不足、疲労の蓄積は、大きな病気の引き金になる場合も少なくありません。

ちょっと休みたい。少しだけ寝たい……。そう感じたら、遠慮しないですぐに休み、疲れ、寝不足を早めに解消することをお勧めします。

夜眠れない老人
写真=iStock.com/PonyWang
※写真はイメージです

アメリカの心理学者サラ・メドックは、さまざまな実験の結果、30〜90分程度の昼寝をすると注意力、判断力、運動能力が高まり、五感が冴え、ストレスも軽減し、記憶力が増すと報告しています。

疲れも同じです。

年を取れば、誰でも疲れやすくなってきます。

それなのに「若い頃はこのくらい何でもなかったのに、情けない」と思うから、ますます情けなくなり、気分まで滅入ってしまうのではないでしょうか。

「老いぼれだと思われたくない」と歯を食いしばって頑張ってみたところで、後でどっと疲れが押し寄せ、状況が悪化するだけです。

まだまだ頑張ろうという気力はすばらしいと思いますが、もっと頑張りたいなら、なおのこと、ちょっとの時間に「上手に休む術」を身につけるほうが賢明です。

一緒にいる若い人から「ひと休みしませんか」と口に出すのは、いかにも高齢者に気を遣っているようで、実はとても言いにくいものだと聞きます。妙な意地を張らずに「この辺でひと休みしないか」と声をかけるのは、年長の者からすべき心遣いだと考えましょう。