増える高齢者のうつ病「早く寝て忘れてしまうのがいちばん」
21世紀の現在、昔と比べて長くなった老後を目いっぱい楽しんでいる人が増える一方で、長い老後をもてあまし、自分の気持ちを追い込んでしまい、ついには「うつ病」になってしまう人も増えています。
人生はいいこと、うれしいことが半分、つらいこと、苦しいことが半分ずつで成り立っている――私はそう考えています。ところが、うつ病になりやすい人は見るもの聞くものが暗く見え、気分がひどく落ち込んでしまうのです。
何事にも興味が持てなくなり、何をするのも億劫で面倒くさく、一日中ぼんやりと過ごすことが増えてくる人もいます。
そのため、高齢者のうつ病は「認知症」と間違われやすく、「もの忘れ外来」などを訪れる人の5人に1人は、認知症ではなくうつ病だともいわれます。
うつ病の原因は複雑です。悲しいことや悩みごとがあるから、うつ病になるというほど単純なものではありませんが、近親者の死や深刻な悩みなどが引き金になることは稀ではないようです。
「うつ病になるのではないか」と不安を訴える患者さんに私は、「精神的につらいなと思うことがあったら、すぐにその日を終わりにしてしまうといいですよ」とお話ししています。
その日を終わりにしてしまう。手っとり早く言えば、早々にふとんをかぶって寝てしまうことです。パソコンでいう「強制終了」ですね。うつうつと心が晴れない日でも、さっさと寝てしまって翌日になれば、昨日の悩みなど忘れてしまうことも多いはずです。
年を取ると忘れっぽくなる――。これは1つの恵みでもあるのです。
悩むと頭にそれがこびりつき、眠ろうとしても、かえって目が冴えてしまうという人は、軽くお酒などを飲んでみるといいでしょう。
古来、酒は「百薬の長」ともいわれ、量を過ぎないようにすれば、気持ちをゆったりさせたり、元気をかき立ててくれる効果もあるのです。