日本の食材でもタイカレーは作れるが…
三重県桑名市にある老舗企業、ヤマモリは醤油、レトルト製品、タイフードの製造販売をしている。従業員が802人で、売り上げは275億4000万円(2024年3月期)。
同社を大きく成長させたのが現会長の三林憲忠だ。三林は2000年にタイの人々が食べているスパイシーなゲーン(汁物)を「タイカレー」と名づけて売り出した。グリーン、レッド、イエローのタイカレーをレトルト製品として発売し、今ではタイカレーにおいて日本国内ではナンバーワンシェアを誇る。
同社が出しているタイカレーはタイにある工場で作っている。
会長の三林に聞いた。
「なぜ、わざわざ現地工場で作るのか」
すると、彼はこう答えた。
土壌が違う日本では「本物の香りと味」が出ない
「本物のタイカレーは現地でなくてはできないからです。インドカレーのレトルト製品を作るのであれば日本国内でできます。インドカレーはドライスパイス、ドライハーブで作るから日本でもできる。
ところがタイカレーは生のハーブを入れないと独特の香りが出てこない。私はタイカレーを作る以上、本物でなくてはいけないと思ったので、大きな投資をして現地に工場を作りました。ですから、うちのタイカレーは香りが違います。味も違います。
実は日本でもタイのハーブを栽培してみたのですが、気候と土壌が違うから本物の香りや味が出てきません。レモングラス、コブミカンの葉、小さなナス(スズメナス)は現地産の生でなくてはダメです」
現在、日本ではさまざまなタイカレーの製品がスーパー、コンビニに並んでいる。そのうち、現地工場でレトルトのタイカレーを製造しているのはヤマモリだけだ。他のレトルトタイカレーは日本国内で製造している。いくつか購入して食べ比べてみたが、確かに香りの点ではヤマモリ製品に一日の長があるような気がした。
では、実際の工場の様子はどうなっているのか?
そこでタイへ出かけることにした。むろん、自腹である。