裁判で勝てば賠償金、一方で出費も

しかし、当事者間での早期解決ができない場合は、次なる手段として、訴訟提起に移行することが考えられる。訴えを提起するには、原告となる当事者もしくはその訴訟代理人(弁護士)が裁判所に訴状を提出することになり、必要な法的手続を経る必要がある。

訴訟が提起された後は、当事者間で主張・反論を繰り返し、最終的には、裁判所が判断をすることになる。ここで、詐欺行為が認められれば、裁判所から相手方に賠償命令が下される。相手方に現金がない場合は、差押えなどの手続によって、現金化できるものが強制執行の対象となる。

これら一連の手続を的確に行なうためには、一度弁護士に相談をするのがよい。ただし、正式に弁護士に依頼する場合、勝訴した場合でも着手金や報酬金、実費などの弁護士費用がかかるので、それも含めて相談してみたほうがいいだろう。

裁判所の看板
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被害金を回収することは困難と知っておくべき

次に、②刑事上のアプローチとはどのようなものか。

まず、詐欺の被害に遭った旨を警察に相談することになる。具体的な被害事実が明確で、証拠が揃っていれば、被害届を提出して、警察が捜査を開始してくれる。警察が捜査を開始したとすれば、加害者が見つかるのを待つことになる。

「頂き女子りりちゃん」の事件のように、被害額が高額に及べば、深刻な刑事事件として捜査が進む。詐欺罪は、その法的刑に罰金刑がないことからしても、重罪と考えられている。そのため、被疑者として捜査対象になった者は、刑事罰を免れるために、積極的に被害賠償を打診する場合が実務では多い。

もちろん資力がある場合の話ではあるが、資力がない場合であっても、借金をしたり、分割払いという形をとったりするなど、刑事事件上の示談を締結するという選択肢も考えられるところである。これで被害弁償が法的拘束力を伴った形で約束されるので、財産を全く取り返すことができないよりはマシであろう。

仮に男女の関係からの詐欺被害に遭ってしまった場合、法律上は、以上述べたような民事と刑事のアプローチが用意されている。しかし、いずれの措置をとったとしても、財産を詐取した加害者に支払能力がなければ、最終的に金銭を回収することは難しいと思われる。

結局のところ泣き寝入りをすることになってしまうことが多いからこそ、いくら恋愛感情とはいえ、お金を相手に渡すときはさまざまなリスクがあることを考えてから実行すべきである。

とはいえ、被害者としての正当な権利行使を実行するとなった場合は、民事と刑事のアプローチを検討して、弁護士に一度相談するのが確実かと思われる。

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