「お金を返してほしい」は実現するか

たとえば、「頂き女子りりちゃん」は、「親と縁を切るために手切金として800万円を支払わなければならない」などと被害男性に伝え、被害男性は、それが真実でないにもかかわらず、真実であると思い込んだことで(錯誤に陥っている)、多額の金銭を交付することになったわけであり、これは立派な詐欺罪として処罰対象となる。

「頂き女子りりちゃん」のケースでは、懲役9年・罰金800万円という非常に重い判決が下り、これを不服として控訴中であるが、被害者としては、加害者の刑事罰はさておき、実際に詐取された金銭の返還を求めたいという気持ちを持つであろう。

このような場合、男性としては、今まで貢いだ金銭を全額取り戻したいところであるが、どのような手段が考えられるのか。ここでの選択肢は、大きく①民事上のアプローチと②刑事上のアプローチに分けられる。

自力救済が禁止されている日本においては、たとえば、暴力や脅迫を手段として財物を取り返すということはできない。これをやれば、被害者という立場から一転、加害者という立場になってしまう。そのため、適法な手段による解決策を選択する必要がある。

まずは内容書面を送って相手の反応を見る

まず、①民事上のアプローチとはどのようなものか。詐欺行為は、不法行為(民法709条)に該当すると考えられるため、相手方の不法行為に基づく損害賠償請求が可能となる。また、加害者が正当な理由に基づかないのに利益を得たとして、不当利得(民法703条)による損害賠償請求という方法も考えられる。

いずれの法的構成であっても、いきなり訴訟提起という手段を踏むのは、一般的にハードルが高いであろうと思われるから、まずは相手方に内容証明などの公的書面を送る方法が考えられる。この書面には、通常、被害を受けた内容と金額を記載し、「14日以内に応じない場合は、法的措置を検討します。」などの文言をつけることが多い。

これで相手方が素直に応じてくれれば、当事者間で穏便に解決できる。穏便に解決できれば、深刻な刑事事件に発展する可能性も低くなり、社会的にも望ましい結果であろう。