中国のカラオケ店で狙われる日本人

日本においても2004年に、当時の在上海日本総領事館員が、関係のあった中国人女性を巡り中国公安によって諜報活動への協力を強要され、「国を売ることはできない」と遺書を残して自殺した痛ましい事件が発生している。

上田篤盛・稲村悠『カウンターインテリジェンス 防諜論』(育鵬社)
上田篤盛・稲村悠『カウンターインテリジェンス 防諜論』(育鵬社)

同事件の舞台は上海のカラオケ店であったとされる。最近は、無数に存在するカラオケ店でハニートラップを仕掛ける事例が確認されている。中国では売春は重大犯罪であり、中国情報機関がその重大犯罪を見逃すことと引き換えに、機密情報の提供を強要するという。カラオケ店の女性従業員は、顧客の名刺と引き換えに「売春」の罪が減じられるため、客の名刺収集に余念がないという。中国情報機関が民間人を装い、意図的に工作対象者に近づき、カラオケ店に誘い、ハニートラップを仕掛けることもあるようだ。

訪中した日本の官公庁職員やビジネスマンの中には、「宿泊するホテルに複数の女性が訪ねてきた」などハニートラップを想起させる事例に遭遇する人も多い。

また、日本国内では、高級中華料理店でハニートラップが行われているという話をよく聞くが、重要な工作は「会員制のラウンジ」において行われているケースが目立つ。会員制であるため、当然日本の公安当局は店内に入ることができない。そのため、現場を押さえることが非常に難しいというわけだ。

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