なぜ、フィギュアの安藤美姫さんの「16歳教え子デート」は大きく報じられたのか。ジャーナリストの此花わかさんは「メディアの側に『年上女性とのセックスは男の子の通過儀礼』といったバイアスがあり、面白おかしく扱っているところがある。かつてアメリカで実際に起きて今回映画化された事件から何も教訓を得ようとしていない」という――。
「安藤美姫、16歳教え子デート」過熱報道が映す醜悪
元フィギュアスケート世界チャンピオンの安藤美姫さん(36)が、専任コーチを務める16歳の男性フィギュア選手と遊園地で手をつないでデートをしていたと『週刊文春』(7月4日号)が報じたことは記憶に新しい。
X(旧Twitter)では、
「安藤美姫さんの件、36歳のおじさんと16歳女子高生なら逮捕案件」
「男女が逆だったらデート扱いになるのはなぜ」
など、メディアのジェンダー・バイアスを指摘する声、また、師匠として弟子をこのような状況に陥らせてしまった安藤さんを批判する声もあった。
文春オンラインがこの記事を配信する前日、安藤さんは英文でこのような文言をXに投稿していた。
「誰も信じることができない。誰かの人生や心を打ち砕く可能性についてどう感じているのか。とりわけ、その人物に家族がいる場合には……。微笑みながら人を傷つけられるのはなぜ。あなたたちは真実を知らない。どうしてあなた方みんなは自分の知らないことを信じられるのか……。これ以上耐えられない。燃え尽きたように感じる」(筆者訳)
安藤さんのこの投稿は、27年前にアメリカで起きたある事件を筆者に彷彿とさせた。本稿では、その事件の概要に触れつつ、それが内包するさまざまな問題を指摘したい。
なお、アメリカの事件は安藤さんの件には直接的には関係がないこと、また、安藤さんと教え子との“キリトリ写真”だけを見て彼女を一方的に断罪するような行為に筆者は断固反対であることをあらかじめお断りしておきたい。