13歳の男子生徒と関係をもち、後にその生徒と結婚した34歳女性教師

今から27年前の1997年、ワシントン州で34歳の女性教師が児童レイプの罪で逮捕され、7年の懲役判決を受けた。教師は4人の子どもをもつ既婚者だった。

女性教師は子育てをしながら夜学に通って小学校教諭の免許をとり、同僚からも尊敬されていた。自身が教えていた12歳のある男子生徒は芸術に才能があり、女性は彼の才能を育てようと自宅に招き、創作を励ましていたという。

ティーンの男子たち
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
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ある日、この生徒はいとこと「先生を誘惑できたら20ドルもらう」賭けをし、教師を誘惑し始める。10代前半の男の子と30代半ばの大人のちょっとした恋愛ゲームのような関係が続き、ある日女性教師は生徒にキスをし、2人は一線を超えてしまう。やがて教師は妊娠し、生徒との手紙のやりとりが夫の友人に発見されて、「事件」が発覚する。当時13歳になっていた生徒は、教師との関係は真剣な交際だと語り、世間を驚かせた。

さらなる衝撃はその先だ。逮捕の4カ月後に娘を出産した女性教師は、生徒に二度と会わないことを約束に懲役6カ月(うち3カ月執行猶予)に減刑されるが、その翌年、仮釈放中にその男子生徒とカーセックスをしているところを再逮捕されてしまったのである。

しかも逮捕時、パスポートと大金をもち、海外逃亡をするつもりだったとされる2人。この再逮捕で仮出所は取り消されて、7年の懲役刑に服することになった女性教師はまたもや妊娠していた。結局、服役中に彼女が生んだ2人の娘は男子生徒の両親に育てられた。

そして2004年、7年近い服役を経て仮出所を果たした教師(当時40代)は、翌年、21歳に成長していた元男子生徒と結婚。この結婚式はアメリカのエンタメニュース番組により取り仕切られ、報道された。児童レイプ罪が“悲劇のラブストーリー”に転換されたのである。

当時筆者はアメリカにおり、メディアが報じた、厳格すぎる両親、望まぬ妊娠による結婚、浮気の絶えない夫……などといったメアリーの不幸せな生い立ちを知り、その報道姿勢が当初の批判的なものから共感的なものへ変わっていったのを不思議な気持ちで眺めていた。

当事者をコンテンツとして消費する危険性

ここに第一の問題がある。当事者がコンテンツとして搾取される危険性だ。この部分に関しては冒頭のフィギュアの安藤さんと16歳の男子選手の件も同様で、部数やPVのため興味本位で報じられる対象になっている。

全米を揺るがせた児童レイプ事件は、“コンテンツ”として何年も消費され続け、最後にはシンデレラストーリーとしてハッピーエンドで幕を閉じた。けれども現実はハッピーエンドではなかった。

女性教師が服役中、生徒は高校を中退し、自殺未遂を起こしてアルコール依存症やうつ病に苦しんでいたのだ。「周りの大人は誰も助けてくれなかった」と後年、元生徒はメディアに語っている。

結局、結婚12年後の2017年に元生徒の申立で離婚が成立。元生徒をよく知る人は「彼はやっとクリアに物事が見えるようになり、2人の関係は始めからして不健康なものだったということに気づいた」と話した。マスコミが2人を“悲劇のロマンス”として語り続けたことで、元生徒は悲恋の主人公としての役を無理やり演じ続けてきた可能性があるのだ。