外国人観光客は日本のどこを訪れているのか。東大カルペ・ディエムによる『外国人しか知らない日本の観光名所』(星海社新書)より、第2章「関東地方の知られざる観光名所」の一部を紹介する――。(第1回)

早朝から外国人観光客が集まる鳥居

茨城県大洗町の「神磯の鳥居」は、その美しい朝日が写真映えすると話題になり、フォトスポットとして一躍有名になりました。祭神の降臨地とされる岩礁は「神磯」と呼ばれ、一般人が足を踏み入れてはいけない禁足地に指定されている、宗教的なパワースポットでもあります。

神社の祭神は、神話「因幡の白うさぎ」で知られる福徳を授ける神、大己貴命と傷病治癒の神少彦名命。彼らが世の苦しむ民を救うために降臨されたのがこの神磯の鳥居の場所です。

さて、なぜこの鳥居が外国人の間で有名となったのでしょうか?

大洗磯前神社 神磯鳥居
大洗磯前神社 神磯鳥居(写真=Saigen Jiro/PD-user/Wikimedia Commons
人気の理由

人気なのは、なんといってもやはり壮大な景観です。太平洋から昇る朝日と磯に打ち寄せる荒波を背景に、凛とたたずむ鳥居は圧巻です。日の出時には多くのカメラマンが訪れシャッターチャンスを狙います。

朝は地元のお店や社務所も開いていませんが、皆この風景を見るために鳥居の前に集まります。日が昇った後は神社境内にある、24時間採水可能な「御神水」で水をもらい福を持ち帰ります。

特に冬至の時期は日の出が遅いため、外国人観光客が朝早くタクシーに乗って地元の人と一緒に朝を迎えることが増えてきているようです。

また夜の海に映える鳥居の影も幽玄で美しく、徳川光圀が「荒磯の岩に砕けて散る月を一つになして帰る浪かな」という和歌に詠んだ、静かな月と共に海辺で過ごす時間を味わえます。