「ホス狂い」「DV」も同じ原因のことが多い

こうした心理を念頭に置いて社会を見渡してみると、いろいろなこともわかってくる。若い女性の間で流行している「ホス狂い」(=一人のホストに没頭する人を指す俗称)も、反復強迫に近いのだろうと思う。

DV問題も同じである。せっかくDV加害者から離れたのに、また同じような相手といっしょになってしまう人がいる。

共通しているのは、けっして振り向いてくれない相手に一生懸命になるという点である。

ここに、幼少期の心の傷が浮かび上がってきそうである。

「反復強迫」は、私たちにとって「安心」とは何か、「生きている」とはどういうことなのかを問いかけてくれるようでもある。

これを考えていくのに、その後の名取さんの話は示唆に富んでいた。

やがて彼は、自身が受けてきたことが虐待だったと理解した。そして、決して母親から愛されていたことなどなかったのだとも知った。

このショックは大きかったが、変化もあった。

植原亮太『ルポ 虐待サバイバー』(集英社新書)
植原亮太『ルポ 虐待サバイバー』(集英社新書)

ギャンブル問題が自分の心の傷を確認するかのようにして起きていたことが見えて、わざわざ「負けに行く」ことはしなくなった。このときの気持ちを次のように話してくれた。

「いろいろと理解していくにつれて、自分のことが可哀想になりました。もともと、別にギャンブルじゃなくてもよかったんだと思いました。ここで言われたように、虚しいのを確認できればよかったんだと思ったら、ギャンブルに固執しなくなりました。むしろ、いままで何をやっていたんだろうと思ったんです。ほんとうに虚しかった、その真っ只中にいたから、虚しさがわからなかった。いま、こうして俯瞰していると、しょうがなかったと思えました。あのときの自分には、これも必要だったんだと……」

以後、ギャンブルをしようとも、したいとも思わないという。

原因を知って「自分のことが可哀想に」なった

名取さんが言ったように彼らにとっては、ギャンブルやアルコールではなくてもよかったのだろう。必ず「裏切られる」ことを確認できる行為なら、特にひとつのことに拘泥こうでいする必要はないのかもしれない。そうしてでも「生きている」ことを確認できないと、社会の中で居場所がなくなってしまう。親からも存在を認められてこなかった彼らは、こうしてギリギリの存在感をつないできたはずである。

社会の中で必要だった生き方が見えてくれば、そこからの修正を図ることができる。これに関しては、名取さんが証明してくれている。彼は「自分のことが可哀想に」なった。そして賭博をしなくなった。そうせねばならなかったわけを理解したからだ。

自分の中にある気持ちに気づくと、行動は変わる。

行動は気持ちに支えられているのである。

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