お金に執着がなくても「ギャンブル依存症」に陥る人がいる。『ルポ 虐待サバイバー』(集英社新書)著者で、心理カウンセラーの植原亮太さんは「意志が弱い・だらしない人と思われがちだが、そうではない。幼少期に親から受けた心の傷が原因となるケースがある」という――。

※本稿の事例は、個人が特定されないように一部事実を加工しています。

スロットマシンの前で頭を抱える男性
写真=iStock.com/GoodLifeStudio
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「児童虐待」が原因となったギャンブル依存症

ドジャースの大谷翔平選手の元通訳・水原一平氏の一件で、日本でも「ギャンブル依存症」が再注目されるようになった(DSM-5-TRというアメリカ精神医学会が発行する国際的な診断基準では「ギャンブル行動症」へと正式名称が改められたが、本稿では通称の「ギャンブル依存症」を用いる)。

「ギャンブル依存症」と聞いて、読者の方はどのようなイメージを持つだろうか。「意思の弱い人」などだろうか。一般的には「勝ったときの興奮が忘れられない」「負けを取り戻したい気持ちが依存症へと発展させる」と思われがちだが、こうした通常の心理とは異なる理由で、ギャンブルをやめられなくなる人がいる。この背景には幼少期に親から受けた「児童虐待」が原因のこともある。

好きでもないのにギャンブルがやめられない

名取勝之さん(50歳・仮名)は、自身の金銭問題に悩んでいるという趣旨で相談にやって来た。

「これまで、妻からは何度も病気だと言われてきました。パチンコに競馬、負けるとわかっているのにやってしまうんです。依存症の治療を受けたことがあるんですけど、あまり効果はありませんでした」

名取さんの借金は膨れ上がり、その返済のために別の消費者金融から借金をしてしまった。それを妻に知られてしまい、今は妻が金銭管理してくれているが、今度はインターネットゲームに課金し始めてしまったという。

一般的なギャンブル依存症かなと思った矢先、名取さんは意外な言葉を口にした。

「ギャンブルもゲームも、特に好きなわけではないんです。熱中しているわけでもなくて、それなのに、やめられないんです」

金銭問題によって日常生活に支障が出ている点で見れば、依存症だと判断しても相違ない。ここで肝要なのは、なぜそうなってしまうのかである。私はカウンセラーの立場から名取さんがギャンブルに興じる心理的背景を細かく確認していった。

「どのような気持ちで、賭博を行うのですか?」
「当たればいいなとは思いますけど、当たらないことはわかっています」
「当たったときの気持ちはどうですか?」
「嬉しいですけど、別にそこまでではないです」
「話が変わりますが、ゲームは好きなのですか?」
「いえ、他にやることがないので、ついついやってしまう感じです」