「国債発行の年限を短期化」は危機の先送り策

仮に日銀が長期国債の購入を減額したら……と、国債マーケット(長期金利の行方)を心配していたら、「財務省、国債発行年限の短期化を検討 日銀の減額方針で」(6月20日付け日経新聞朝刊)とのニュースが飛び込んできた。長期債の発行額を抑え、銀行などの買い手がより国債を購入しやすくする、という狙いがあるそうだ。

「あれ~、ここまでやるの? いよいよやばい。悪あがきもいいところ」と思った。購入を増やすために財務省も懸命だ。

日銀の次回7月会合で相当額の「国債買いオペ減額」をやらなければ180円、200円を超える円暴落があり得る。しかし「国債買いオペ減額」が大きすぎると需給のアンバランスで長期金利が暴騰し、日銀自身が債務超過になり、国債入札でも未達(国債入札額が発行額まで届かない=デフォルト)が起きるリスクもある。

ならば、政府は相当額の「長期国債発行の減額」をせざるを得ない。円暴落を防ぐには需要が減る分(=日銀の国債の買いオペ)、供給も減らす(=長期国債発行減額)しかないだろう、という発想だ。

(筆者注:日銀「国債減額オペ減額」の対象が長期債なので、政府は長期国債の発行を減らす必要に迫られる可能性もある。ただし長期債を減らした分、短期債の発行を増やさないと政府の支出を賄えない)

「国債発行の年限を短期化」は、政府・日銀がいかに円暴落を怖がっているかを物語っている。まさに「次々に出てくる難題をもぐらたたきで収めよう」という最終段階にあると私は見ている。自分たちの任期さえ何事も無ければいいという日本得意の危機先送り策の典型例だ。

令和5年4月10日、岸田総理は、総理大臣官邸で日本銀行の植田和男総裁と就任に当たって会談を行った
令和5年4月10日、岸田総理は、総理大臣官邸で日本銀行の植田和男総裁と就任に当たって会談を行った(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

日銀破綻だけでは済まない

そもそも金利上昇期には短期資産、長期負債のポートフォリオを構築するのが我々リスクテーカーの常識だ。資産サイドはなるべく短期で運用し、長短金利が高くなってから長期資産を買って高い金利を長期にわたってエンジョイする。

借金は金利が低いうちに長期間モノを確保し、金利が上昇しても低い金利の支払いで済むようにする。金利上昇期に皆さんが住宅ローンを変動金利ではなく固定金利で借りようとする理由と同じだ。

国も同じ。しかし、これから金利が上昇しても低い金利を10年間払えばいいだけだったはずなのに、より短期の債務として金利上昇期に脆弱な財務体質にしようとしている。

こんなことをして格付け機関は日本国債の格付けを据え置いてくれるのか? Xデイ後に日銀をとっかえるだけでハイパーインフレを鎮静化させ日本は再興達成と思っていたが(=国はハイパーインフレで究極の財政再建)、こんなことをしたら、日銀だけでなく、国も(究極の財政再建を果たす前に)財政破綻で、日銀と共にドボンだ。