日本銀行は6月13日、14日の金融政策決定会合で、国債買い入れを減額する方針を決めた。日本経済はこれからどうなるのか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史さんは「日銀は異次元緩和政策の修正を図っているが、実際は何も変わっていない。7月の決定会合が円暴落の『引き金』になる可能性は高い」という――。
金融政策決定会合後の記者会見を終え、退出する日本銀行の植田和男総裁=2024年6月14日午後、東京・日本橋本石町の同本店
写真=時事通信フォト
金融政策決定会合後の記者会見を終え、退出する日本銀行の植田和男総裁=2024年6月14日午後、東京・日本橋本石町の同本店

日銀には、円安も物価高騰も止められない

6月18日の参議院財政金融委員会で、植田和男日銀総裁が「通貨及び金融の調節に関する報告書」の説明を行った。冒頭の「経済金融情勢」で植田総裁は「わが国の景気は、一部に弱めの動きがみられますが、穏やかに回復しています」と述べられた。

日本経済は、今、大恐慌の瀬戸際にあるわけではない。それにもかかわらず金融政策は史上最大規模の「超超超超超金融緩和状態」にある。日銀の金融政策は、彼ら自身の経済情勢分析と著しいミスマッチを起こしている。

短期政策金利である無担保コールレート・オーバーナイト物は0~0.1%でほぼゼロ%に等しい。さらには、異次元緩和政策以前の伝統的金融政策時代には禁じ手だった「お金ジャブジャブ」政策まで採用し、現在その状態は最高レベルだ。

日銀はその状況を日々加速させている(筆者注:日銀は国債を償還額以上に購入している=保有国債純増。国債購入の対価として市中にばらまかれたお金も増加を続けている)。円安は止まらず、人々が苦しんでいる物価高騰に何ら手を打てずにいるのだ。

政府は物価対策と打っているのに…

岸田文雄首相は6月21日、国会閉会後の記者会見で、物価高に対応して8月から10月まで電気・ガス料金の補助を追加実施するなどと表明した。会見の中で首相は「年末までの消費者物価の押し下げ効果を措置がなかった場合と比べて月平均0.5%ポイント以上とするべく検討していく」と述べ、追加の経済対策についても言及した。

政府が物価上昇の抑制を図っている最中に、日銀は物価上昇を促すような真逆方向に思いっきり綱を引っ張ろうとしている。なぜ、日銀は「超超超超超金融緩和政策」にこだわるのか?

たしかに電気・ガス料金の補助で財政赤字は更に膨らみ、財源として増発された国債を日銀が買い取ることで、さらにお金が市中にばらまかれる。円安は進み、物価は上昇する。理論的には、日銀の思惑の通りともいえるが、それは悪い冗談だ。