売上10兆円を1年前倒しで達成
日用品や食品、さらには調剤まで、今やあらゆる生活機能を1カ所で担う存在になったドラッグストア。その勢いが、いよいよ“国民的インフラ”と呼べるレベルに到達しつつある。
2024年度、日本のドラッグストア業界がついに10兆円の大台を突破した(前年度比9.0%増の10兆307億円)。日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が中期ビジョンとして掲げていた「2025年に10兆円産業へ」という目標を、1年前倒しで達成したことになる。
この数字は、百貨店やホームセンターを大きく上回り、コンビニエンスストア(11.8兆円)に迫る規模だ。しかも、コンビニが出店鈍化・人手不足という壁に直面する中、ドラッグストアの出店数は1年で682店舗も増加し、全国で2万3723店舗に達している。
JACDS会長であり、マツキヨココカラ&カンパニー副社長でもある塚本厚志氏は「10兆円は通過点であり、健全な競争環境を整えれば、2030年には13兆円の産業になる」と展望を語る。
町の薬屋がなぜ変化できたのか
ドラッグストアの歴史は、町の薬局や薬店が生活者に寄り添ってきた流れの中で育まれてきた。1970年代から1980年代にかけてのセルフ販売の普及により、米国型のドラッグストア業態が日本に導入され、医薬品や化粧品、日用品をセルフで安価に購入できる仕組みが登場した。
1990年代には薬事法(現在の薬機法)改正により、一般用医薬品(OTC薬=処方箋なしで購入できる市販薬)の販売が拡大し、登録販売者制度の導入によって医薬品販売の担い手も広がった。また、1995年の阪神淡路大震災を契機に、被災地支援で存在感を発揮したドラッグストアは、地域に根ざした業態としての価値を再認識されるようになった。
2000年代に入ると、チェーン化と大型化が進み、調剤薬局との併設型店舗が増加。2010年代以降は、食料品や化粧品、介護用品なども取り揃え、生活全般を支える業態へと進化した。