「相手の気持ちを考える」ということ

観察③ 頭の上の「吹き出し」を想像する

本やビジネスのシーンでは、よく「相手の気持ちを考えよう」「相手が言ってほしいことを伝えよう」と言われます。

相手の気持ちを考える、とは具体的に何をどうすることでしょうか。

人は、自分以外の誰かの気持ちを100%理解することなどできません。

わからないけど、わかろうとすることが、相手を理解するということだと言えます。

具体的には、相手の頭の上に浮かんでいる吹き出しを想像することだ、と私は定義しています。マンガによくある、頭から浮かんでいる吹き出しです。

たとえば、同僚に、チームの誰かがやることになっている仕事をお願いしたとしましょう。

その人は口では「いいよ、私がやっておくね」と言っているけれど、なんだか顔が曇っています。声のトーンも低いです。表情や声の感じを見ると、どうも納得していなさそうに見えています。

そのときに、相手の頭の上に、どんな吹き出しが浮かんでいるかを考えてみます。

・もしかしたら「何で自分ばっかり」と思っているのかな
・「自分でやってよ、と言いたいけど、言えないなぁ」と思っているのではないか

このように、吹き出しの中を想像していきます。

これが、「相手の気持ちを考える」ということです。

相手にとっての「正しい理由」を想像してみる

相手が言うこと、言葉にしたことだけに目を向けず、相手の言葉にできていない思いを、表情や声のトーンや態度や仕草などから想像してみましょう。

これは、目の前にいる相手だけでなく、周りのすべての人に対してできることです。

目に見えている情報だけでなく、次のような見えていない情報(相手が言葉にできていないこと)を想像してみてください。

・なんのために、今その行動をしたのか
・それをしている(その人にとっての)理由は何か
・その行動で何を得たかったのか
・その行動(や表情や態度)で、何を伝えたいのか
・その人は、今、何を感じ、何を思っているのか

もちろん、想像なので、考えてみたところで、相手の気持ちがすべてわかるわけではありません。

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でも、相手の言葉や行動だけで判断せず、相手をわかろうとすること、相手の意図や思いを知りたいと思うことが、大事なのです。

そのときに大切なのは、「この人はこう考えているに違いない」と勝手に決めつけないこと。

あくまでも観察をベースに、自分の主観をできるだけ外して、相手の背景を想像します。

「この年代の人はこう」「この部署の人はこういうタイプ」など、カテゴリに当てはめて人を見ると、観察をする目が曇ってしまいます。

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