「自分の思い込みで部下の客観的な意見を否定しない」という教訓

現代でも、上司に対して、部下が反対意見を述べることはあるでしょう。

江戸時代ほどではなくても、上役に意見するのは勇気や覚悟が必要です。そのぶん、組織のことを真剣に考えての意見になります。そのときに大事なのは、“上司の姿勢”です。

会議
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まず、意に反する部下の意見に対して感情的になって怒ったり、「絶対に自分が正しい」という高圧的な態度をとったりすると、その後意見は上がってきません。

組織のことを思って発言したことがマイナス評価を受けるのであれば、部下はばからしくなり、余計な発言を控えるようになるのは、容易に想像できます。

どんな発言であっても、いったんは耳を傾け、話を最後まで聞くべきです。そのうえで、「組織にとって有益な意見」だと思えば受け入れるべきですし、そう思えなければ感情的にならず、そのことを論理的に伝えるべきです。

とはいえ、組織にとって有益な意見かどうかの判断は、けっこう難しい局面もあります。

経営に絶対的な正解はありませんから、どの道をどう進んだら、どういう結果になるかは、やってみなければわからないことだらけだからです。

いずれにしても、松平容保のように自分の信条や美学にこだわり過ぎると、部下の意見を頭ごなしに否定してモチベーションを下げてしまい、組織としては間違った方向に傾くことがあります。

自分の信条や美学にこだわりすぎると、道を誤ることも

私も長年の会社員の経験やコンサルティングのなかで、部下が意見をしにくい社内環境、仮に部下が意見をあげても、なんの反応も示さないシーンを数多く見てきました。

ある会社では、社長が営業拠点を大きく拡大しようとしたとき、多くの部下が反対だったものの、日ごろから独断専行で部下の意見を聞く姿勢がないため、意見さえしなかったケースもありました。

場合によっては、独断専行でも成功することがあるかもしれません。しかし、そのときの営業拠点拡大のケースでは、採算がとれない状態が長期にわたっています。

部下から意見が出てきたときには、仮にそれが自分の考えと異なることであっても、まずは耳を傾けることが大前提です。

そのうえでリーダーが責任をもって最終判断をするのです。

その際、松平容保のように自分の信条や美学にこだわり過ぎていないかを自問自答してみてください。

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