プラスもマイナスも思考は伝染する

相続でも同じこと。がさつな兄に対して繊細になれといっても無理。せっかちすぎる妹に、じっくり考えてほしいといっても無理なのです。それが理解できれば、相続でイラッとしたときにも腹を立てることがなく、「プラス思考」で受け流すことができます。

「プラス思考」は、人に伝染するという性質があります。

天野隆、税理士法人レガシィ『相続格差 「お金」と「思い」のモメない引き継ぎ方』(青春新書インテリジェンス)
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1人が「プラス思考」になれば、周囲の人を巻き込んでみんなが「プラス思考」になっていきます。相続の場面でも、自分の主張ばかりしないで他人の話を丁寧に聞く人がいれば、ほかの人もにこやかになって平和に進んでいくことが多いのです。

しかし、困ったことに、「マイナス思考」にはもっと早く伝染する性質があります。誰かが「あんたの奥さんは気が利かない」などということを口走ると、「なんだ、そこまでいうか」「じゃあ、お前のところはどうなんだ」と、どんどん「マイナス思考」が伝染していってしまいます。さらには、自分の奥さんにそれを伝えようものなら、「あの弟がそんなことをいったの⁉」と何倍もの感染力で広がってしまいます。こうなったら、ちょっとやそっとでは譲れません。そんな相続の現場を私は何度も見てきました。

「ツキカエタの法則」でプラス思考へ

そうならないために、私が考えたのが「ツキカエタの法則」です。これは、「プラス思考」になるための5つの心構えについて、その頭文字を取ったものです。

・ツ……ツイている人は、ツイている人とつきあうとさらにツキがつくということ。プラスな人とつきあうと「プラス思考」になり、マイナスな人とつきあうと「マイナス思考」になってしまいます。

そして、ツイている人はどういう人かというと、次のような人です。

・キ……聞き上手。ほかの人の話をよく聞く人はツイてきます。
・カ……感謝上手。「ありがとう」という言葉を使う人はツイてきます。
・エ……笑顔上手。笑顔のあるところには、もちろんツキがきます。
・タ……他人に親切上手な人にも、もちろんツキがきます。

私も、何か心がモヤモヤしたときには、この「ツキカエタの法則」を暗唱することにしています。相続の場面でも日常生活でも、「ツキカエタの法則」を思い出すことで「プラス思考」になれるのです。

お茶を飲みながら笑顔で話す二人の女性
写真=iStock.com/itakayuki
※写真はイメージです
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