必ずしも任意継続がいいとは言えなくなった

改めて整理すると、日本国内に現住所がある人は何らかの公的医療保険に加入する皆保険体制のため、退職後も当然ながら公的な医療保険に加入しなければならない。選択肢は3つだ。

退職した会社の健康保険の「任意継続被保険者」(最大2年間)になるか、もしくは居住地の自治体が発行する「国民健康保険」に加入するか、そして職場の健康保険に加入している家族の「被扶養者」になるか。

ファイナンシャルプランナーの内藤眞弓氏(所属:生活設計塾クルー)がこう説明する。

「これまで在職中に収入が高い会社員は、国民健康保険より任意継続が有利と言われてきました。『退職時の標準報酬月額か、加入者全体の標準報酬月額の平均のいずれか低いほうをもとに計算する』というルールがあったため、収入が高い人ほど任意継続を選ぶとお得だったのです。けれども2022年1月から退職時の標準報酬月額に基づいて保険料を決めることが可能になったので、必ずしも任意継続がいいとは言えなくなりました」

おそらく先の男性が加入していた健康保険組合も規約が変わったことにより、以前は平均標準報酬月額で計算されていたものが、退職時の標準報酬月額で計算されるようになったため、一気に保険料がアップしたのだろう。

確定申告書
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「家族全員分の保険料」を聞くことが重要

例えば、標準報酬月額が50万円で在職中の月額保険料が約2万9000円(従業員負担分)だったとする。しかし加入者全体の平均標準報酬月額が30万円で、それに基づく月額保険料が約3万5000円だとすれば、退職時に標準報酬月額が50万円の人も、その3万5000円を払えばよかったのだ。それが今は在職中の倍である、6万円近くまで負担を求められることもあるというわけだ。

会社員が加入する健康保険は、中小企業で働いている人が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)か、中規模から大手の企業が単独、あるいは同業種が共同して独自に運営する組合健保(組合管掌健康保険)になる。協会けんぽは従来通りの計算方法(退職時の標準報酬月額か、加入者全体の標準報酬月額の平均のいずれか低いほうをもとに計算する)のようだが、組合健保は注意が必要だ。退職前の在職中に「退職して任意継続になると保険料はいくらか」を確認しよう。

次に住まいの自治体で、国保に加入すると自身の前年度の所得に基づきいくらになるのか、それも「家族全員分の保険料」を聞くことが重要だ。任意継続には「扶養」の概念があるため、扶養として配偶者や子どもがいて世帯3人であっても保険料は一人前。ところが国保には扶養の概念がない上、世帯人数に応じて「均等割」という保険料の上乗せがある。世帯3人なら「3人分でいくらか」を確認しなくてはならない。