一方で1500万円社員は「部下との飲み会では和やかな雰囲気をつくる」ことも心がけている(図13)。その割合は58.5%。
会社は仕事をするためのビジネスユニットであると同時に生活の場でもあるので、「公」の中に「私」が入り込んでいるともいえる。そこでうまい上司は、飲み会という私的な色合いが強い場では人間味を見せる。一番手っ取り早いのは、自分の裸の姿をさらけだすこと。恥ずかしい失敗談を披露して部下と一緒になって自分を笑い飛ばすようであれば、部下との距離を縮めることができて、同時に度量を養うことにもなるだろう。
このように部下にも気配りができる上司は、当然のことながら自分の上司にも気配りができるはずなので、結果的には「全方位的に気配り」ができる人物ということになる。
自由回答で聞いた「嬉しかった気配り」として、家族に対する心遣いをあげた人が複数いた。部下の妻や子どもの誕生日を覚えていて、負担にならない程度のプレゼントを用意して渡すといった心遣いは嬉しいものである。
ただし、お気に入りの部下にだけ目配りするという姿勢は禁物である。部下は公平に扱うことが大前提であることはいうまでもない。
「サーバントリーダーシップ理論」では、上司が部下に奉仕することによってアウトプットが高まると説いている。経験や知識のある上位の者が、下位の者がうまくやれるよう支えていくことにより、組織を効率よく円滑に動かすことができるのだ。上司の部下に対する気配りも、上司が部下の位置まで下りることで成立するといえる。かつては「黙って俺についてこい」という強烈なリーダーシップを発揮する命令型上司もいた。しかし、今は部下に目配りしながら半歩先をいく上司が求められている。
ここで気をつけたいことは、ビジネスにおける気配りは、世間一般の気配りとは違うということだ。単なる「いい上司」であってはならない。気配りという能力を上手に使って、仕事がスムーズに進むように仕向けられる上司でありたい。そのためには、相手をよく見て個別に対応できるスキルを身につけなければならない。スキルを高めるには場数を踏むことが一番である。過去に自分がしてもらって嬉しかった気配りを部下に対して行うことから始めよう。