子どもの尻に鞭打ちを行う

最近、エホバの証人をめぐる重大な問題として取り上げられるようになってきた鞭打ちによる体罰については、ここまで取り上げたこととは性格が違う面がある。

エホバの証人のあいだで子どもに対する鞭打ちが頻繁に行われてきたことについては、膨大な証言がある。たとえば、2022年に国会で野党が行ったヒアリングでは、元信者の女性が次のように訴えた。

「下着を取られて、お尻を出した状態で叩かれますので、皮膚も裂けて、ミミズ腫れになり、座ることやお風呂に入ることが地獄だった。同じ組織の信者同士の間で、何を使えば子どもに効率的なダメージを与えられるかの話し合いが日常的になされていた。一家庭の問題ではなく、組織的に体罰が奨励されていた。性的な羞恥心も覚えるようになり、私は毎日、いつ自殺しようかと本気で悩んでいた」(大泉実成「【エホバの証人】『パパぁ、むちしないでぇ』元信者のジャーナリストが語る『むち打ち』の衝撃実態『信者間で“子供に効率的にダメージを与える方法”が日常的に話し合われていた』」集英社オンライン、2023年3月9日)

この記事で、大泉は、『説得』を書くために取材をしていた37年前と変わらないことがくり返されていると述べている。鞭打ちについての根拠も聖書に求められている。旧約聖書の「格言の書(箴言)」13章24節には、「むちを控える人は子供を憎んでいる。子供を愛する人は懲らしめを怠らない」と述べられている。

ベルトを持つ男性と隅に座っておびえる女の子
写真=iStock.com/Zinkevych
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エホバの証人と福音派の違い

他にも、旧約聖書には随所で、同様のことが述べられている。子どもに対する「愛の鞭」は是非とも必要だというのである。エホバの証人は、聖書に述べられたことに忠実であろうとしてきた。

こうした姿勢をとるキリスト教徒は「キリスト教原理主義」と呼ばれ、アメリカの福音派に多い。福音派では、広く知られているように、進化論を学校で教えることや人工妊娠中絶に反対してきた。エホバの証人も同様の主張を持っているが、それを強く主張しない点で福音派と異なる。

それというのも、福音派は自分たちの主張を実現するために政治に積極的にかかわろうとしてきたが、エホバの証人は政治とのかかわりそのものを拒否するからである。