米国と戦争すると米国債が紙くずになる

【大橋】この背景には、ウクライナに侵攻したロシアへの制裁として、米国がSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアを追い出したことがあります。

米国債には、米国及び米同盟国に軍事行動を行えば大統領令だけで無効化できるという「敵対国条項」が購入時の条件になっています。

米国と対立軸にある国は、ドル資産を“無効化”されるリスクが常に横たわっているのです。

ウクライナ戦争前にロシアは米国債を大量売却していた

【大橋】ロシアは、18年米国債の大量売却に動きました。14年のクリミア半島併合後、米国はロシアに制裁を科していますが、以降、ロシアは徐々にドルの保有を減らし21年には、政府系ファンドが持つドル資産をすべて売却しました。

エミン・ユルマズ、大橋ひろこ『無敵の日本経済! 株とゴールドの「先読み」投資術』(ビジネス社)
エミン・ユルマズ、大橋ひろこ『無敵の日本経済! 株とゴールドの「先読み」投資術』(ビジネス社)

代わりに人民元、ゴールドの保有を増やすことを表明しています。その後、22年にロシアはウクライナ侵攻に踏み切りましたが、ウクライナ侵攻前に計画的に米国債保有を削減していたと考えられます。

中国が米国債保有を減らしゴールド保有を増やしているというのはある意味、中国が腹を決めたとも言えるのです。

【エミン】しかも中国はゴールドの産出国なのです。自らの国土からもゴールドが採れるのですよ。

【大橋】そうです。2022年の世界におけるゴールド産出量トップは中国で、年330トンでした。そして中国はゴールドの輸出禁止を貫いています。一旦中国に入ったゴールドは二度と市場に出てくることはありません。

【関連記事】
【第1回】中国が「グローバルな覇権国家」になることは永久にない…中国から外国人駐在員が逃げ出している当然の理由
なぜアップルとグーグルは「GAFA」から脱落したのか…代わって時価総額が急増している「4つの巨人」の正体
「まもなく日米株式市場の大暴落がやってくる」世界的投資家ジム・ロジャーズが予測するそのXデーはいつか
駅近・タワマン物件と全然違う…30年前に購入「郊外の駅からバス20分4500万円庭付き一戸建て」の衝撃の査定額
新NISAで「オルカン」「S&P500」だけを買うのはおすすめできない…リスク回避で組み込むべき投資先