パナソニックは今期、7650億円の赤字となる見通しだ。前期と合わせて2年で1兆5000億円超が吹き飛んだ計算になる。一方、サムスン電子の前期純利益は約9000億円。今期の最高益更新も堅い。(※雑誌掲載当時)なぜ、この差がついたのか。両国企業の「人材力」を徹底検証する。

「技術立国」といわれてきた日本。現状はどうなのか。

博報堂がアジアの14都市に住む人々に各国製品のイメージを調査した「Global Habit」というレポートがある。この中で、日本製品に対し「高品質な」と答えた人は64.6%、対して韓国製品は25.6%だった。このデータを見る限り、世界の消費者はまだ、日本製品に対して「確かな技術に裏打ちされた信頼できる製品」という印象を持っていると推量できる。

だが、そうはいっても技術レベルはほとんど変わらなくなっているのではないか。富士通総研の金氏は、「韓国は、短期的な成果を追求するため基礎研究部門が弱い。まだ、日本の技術力の優位性はある」と前置きしつつも、「性能のいい日本製品から懸命に学んで猛追しています」と注意を喚起する。

サムスン電子やLG電子はこれまで、日本製品を分解して使われている部品や設計方法などを分析する「リバース・エンジニアリング」という手法に注力してきた。乱暴にいってしまえば日本製品の「模倣」をしてきたわけだが、そのうえで世界の市場に合わせた製品づくりを展開し、実績を上げてきた。

電機業界に詳しいコンサルタントは、日本の技術者の自信が裏目に出ている面もあると指摘する。

「以前、日本メーカー製とサムスン製のテレビを分解して部品点数を比較したところ、日本製のほうが20%ほど多かった。日本の場合、技術者が好きなように設計し、技術が暗黙知化しているためだと考えられます」

韓国企業は、初めから安くつくることを前提として製品を設計している。技術者については「いなければ買ってしまえ」という発想だ。近年、日本企業から技術者を引き抜いていることはよく知られている。彼らには数千万~億単位の給料が支払われるケースもあるという。ある関係者は明かす。

「サムスンではロシア人、インド人技術者も増えています。トップ級のエンジニアでも韓国人技術者に比べて半額程度の給料で雇うことができます」